第103章 川辺の再会〜冨岡義勇【R強強】
「なぜ、甘露寺の屋敷の隠と一緒にいるんだ?」
頭上から響いたのは、ずっと耳の奥に残っていた、低く酷く不器用な彼の声だった。
「…義勇さん?」
信じられなくて、震えた声でその名を呼ぶ。
すると義勇は、腕の中のゆきをさらに強く、離さないと言わんばかりに抱きしめ直した。
義勇の広い肩に顔を埋めさせられ、ドクドクと早く打つ鼓動が直に伝わってくる。
「こ、困ります…! こんな道の真ん中で、誰かに見られたら…」
我に返り、慌てて腕の中でもがく。
しかし、義勇の腕はびくともしない。それどころか、彼はゆきの耳元へと唇を寄せ、切ない声で囁いた。
「…誰もいないところなら、いいのか?」
「えっ?」
驚きに目を見開いた瞬間、ふわりと身体が宙に浮いた。
義勇に手際よく横抱きにされ、そのまま川辺の通りから外れた、大きな木陰の死角へと連れて行かれる。
ゆきを膝の上に乗せたまま、義勇はどさりと草むらに腰掛けた。
「ぎ、義勇さん、おろしてください…」
「無理だ」
頑なに拒む義勇…。
だがその時、至近距離で見つめ合う中で、義勇の鋭い視線がゆきの顔の一点に釘付けになった。
「どうした? この傷は…何かで切ったのか?」
ゆきの白い肌に残る、ほんのりとした赤みと傷痕。
それは美月に簪を投げ付けられた傷…それと、婚約者でもある無一郎に二度、平手打ちをされた痕だった。
義勇は痛ましげに眉をひそめ、大きな掌で優しくその頬を包み込む。
そっと親指でなぞるような、おそるおそる触れる指先があまりに温かくて、ゆきの胸の奥に溜まっていた涙が、今にも溢れそうに熱く込み上げてくる…。
「刀鍛冶の里に行ったんじゃなかったのか?時透はどうした?何があったんだ?」
膝のうえに抱かれ、優しく頬を撫でてくれる義勇…
もう、ゆきの心が揺れない理由がなかった…
崩壊したように大粒の涙が溢れた