第105章 無一郎と美月の仲〜時透無一郎
義勇は、幸がゆきをどこか粘つくような異様な眼差しで見つめていることに気がついた。
その視線に気づいた幸は、ゴクリと生唾を飲み込むと、ゆっくりと義勇へ目を向ける。
「…よろしければ、ゆきさんを私の部屋へお連れしましょうか。あちらの布団で横になって休んでいただいた方が…」
「いや、結構だ。ここで休ませる」
義勇の短い拒絶にも、幸は引き下がらなかった。まっすぐに義勇の瞳を見つめ返したまま、静かに言葉を重ねる。
「柱は異性ですし、私は同性です。…痛みに耐えて乱れたお姿のまま、ここで休ませるより、女同士の部屋の方が色々と都合もよろしいかと」
そう言って、幸は再びぐったりと脱力しているゆきへ視線を落とした。
その眼差しには、傷を心配する治療者としてのものとは違う、あやしい熱が孕んでいる。
熱っぽく火照った肌、荒い息吐息とともに覗く薄桃色の舌先、そして乱れた胸元の隙間から覗く鎖骨…
それらを舐めまわすような視線に、義勇は明確な違和感を覚えた。
義勇は抱き寄せる腕にさりげなく力を込め、ゆきの露わになった肌を隠すように自身の羽織を引き寄せて覆い隠した。
「元々は、ゆきは俺の継子だ。無用な心配は要らん」
低い声が、部屋の空気を冷たく凍りつかせる。
義勇の碧い瞳は、幸の底にある歪んだ欲望を見透かしていた。
「お前は今日からこの屋敷に身を置くのだろう?…長旅の荷も解いておらんはずだ。自分の部屋の整理でもしてこい」
そのひと言に幸は僅かに息を呑み、悔しそうに唇を噛んだ。
「…承知いたしました。では、失礼します」
深く頭を下げた幸が部屋を去ると、後には重たくもどこか甘やかな沈黙だけが残された。
「…ゆき」
義勇は胸の中で小さく息をつく彼女の背を撫でながら、耳元でそっと囁く。
「少し休んでから時透を、呼んでやる。」
その声に、薄っすらと目を開く…
「無一郎くんは、呼んでも来るかわかりません…」
義勇は、ゆきを後からぎゅっと抱きしめたまま顔を耳元に寄せる。
「来ない方が、俺は嬉しい…。」
ゆきは、振りほどきたいが力が入らない。
「こうやって今抱き締めている事も二人だけの秘密だ…。」
足がジンジンして頭がぼんやりする…。痛いよ…
だけど、暖かくて…安心する…