第103章 川辺の再会〜冨岡義勇【R強強】
甘露寺の屋敷に身を寄せたゆきは、お世話になるからには何かしないとと思い、隠へ手伝いを申し出た。
しかし、ゆきは一応霞柱の婚約者…
彼女に雑用をさせるわけにもいかない。
隠たちは顔を見合わせ、ある機転を利かせた。
ふさぎ込みがちなゆきの心を慮り、息抜きを兼ねて街への買い物に同行してもらうことにしたのだ。
「甘露寺様はお菓子作りに乾燥した果物をたくさん使われるので、その買い出しですよ。結構な量になりますから、助かります」
快活に笑う隠に導かれ、賑わう街へと繰り出す。
人々の活気や色鮮やかな品々に触れるうち、ゆきの強張っていた表情も徐々に綻び、柔らかな笑みがこぼれ落ちていた。
だが、充実した買い出しの帰り道、川辺へと差し掛かった時だった。ゆきの足が、ふと止まる。
この川辺…
見覚えのある景色に、胸がズキリと痛んだ。
思わず、記憶にある木陰の場所へと視線を巡らせる。
ここからでは遠すぎて、石積みまでは見えなかった。
あの場所は…かつて義勇が、毎晩のようにゆきを待ってくれていた場所だった。
でも、さすがにもう、あそこへは来ていないよね…?
ぼんやりとそんな事を考えながらゆきは川辺から目を離せないまま歩を進めていた。
心ここにあらずで、前への注意が完全に散漫になっていた、その時だった。
鈍い衝撃とともに、誰かの身体に激しくぶつかってしまった。
「も、申し訳ありません!」
同行していた隠が、慌てて同行者の不手際を平謝りする。
ゆきもまた、己の不注意を深く反省し、すぐに謝罪の言葉を口にしようと顔を上げた。
しかし、言葉をつむぐより早く、ゆきの身体は強い力で引き寄せられていた。
視界が胸元で塞がれ、優しくふわっと抱きしめられる。
あたたかな体温と、どこか懐かしい匂いが、ゆきの全身を包み込んでいた。
ゆきを抱きしめている人物は隣にいた隠に、合図を送ると隠は一礼して二人の元を足早に去って行った。