第103章 川辺の再会〜冨岡義勇【R強強】
ゆきが甘露寺の屋敷に身を寄せたという報せは、鎹鴉の鋭い鳴き声とともに、すぐさま無一郎の元へと届けられた。
その頃、刀鍛冶の里の一室では、美月が無一郎と共に向かい合って食事を摂っていた。
膳に並んだ料理を口に運びながら、美月はふと思い出したかのように、小首を傾げてみせる。
「ゆき、まさか甘露寺様の所に行くなんて…。でも、どうして冨岡様の所には行かなかったのですかね?」
探るような、美月の言葉。
その瞬間、無一郎の動かしていた箸がピタッと止まった。
部屋を流れる空気が一瞬にして凍りつく。
無一郎は美月に視線を向けることなく、感情を削ぎ落としたような淡々とした声で遮った。
「ゆきの話は、今しないで…。ほら、怪我をしたんだから、しっかり食べなよ」
「…はい! ありがとうございます!」
無一郎に促され、美月は嬉しそうに笑って再び食事に手を付けた。
しかし、そんな彼女の様子とは裏腹に、無一郎の胸の内には全く別の感情が渦巻いていた。
…良かった
無一郎は、心の底から安堵していた。
もしも彼女が、かつて関わりのあった冨岡さんの元を頼っていたら、自分はどうなっていただろう。
嫉妬で気が狂いそうになっていたはずだ。
冨岡さんのところではなく、甘露寺さんの屋敷にいると知って、張り詰めていた肩の力が僅かに抜けた…。
甘露寺さんの屋敷なら安全だし、彼女ならきっと優しく包み込んでくれる。
今はあの一件以来、お互いに感情が昂りすぎている。
少し距離を置き、冷え切った気持ちを落ち着かせるためにも、これが最善の選択なのかもしれない。
『少しの間、私がお預かりするわね』
鎹鴉が伝えてきた甘露寺からの言伝を思い返しながら、無一郎は静かに瞳を伏せた。
叩いてしまった彼女の頬の感触と、あの時の絶望に満ちた瞳が、いまも無一郎の心の奥底を鈍く突き刺し続けていた…。
ゆき…ごめんね…