第103章 川辺の再会〜冨岡義勇【R強強】
その日の夜、ゆきは部屋の縁側から、ぽっかりと浮かぶ月をぼんやりと眺めていた。
冷たい月明かりが、叩かれた頬の痛みをいまだに鈍く蘇らせる。
胸の奥が張り裂けそうだった。無一郎の継子である美月は、いつも彼に真っ直ぐな気持ちを向けていた。だからこそ無一郎も、自分の弟子であり、真っ直ぐな美月の方を可愛がり、信用してしまうのも無理はなかったのかもしれない。
けれど、美月が言った「ゆきに形見の簪を隠された」という言葉は、真っ赤な嘘だ。
それなのに無一郎くんは、美月の言葉だけを信じ、弁明しようとした自分の頬を叩いた…。
あの瞬間の無一郎くんの冷たい瞳と、肌を焼くような衝撃が頭から離れない。
今までの私の優柔不断な行動が、彼を苛立たせていたから…だから信じてもらえなかったんだ。私はいつまでたっても、いい加減なままだから…
そう自分を責めてみても、信じてもらえなかった悲しみと悔しさで、涙が次から次へと溢れ出して止まらない。
無一郎は、あと数日で刀鍛冶の里から帰ってくるはずだ。
嘘を信じ込んだ彼に、行く宛てもなく結局この屋敷に戻ってきた姿を見られたら、どう思われるだろう。
『泥棒の癖に、行く場所がないからって戻ってきたんだね』
そんな冷酷な言葉をぶつけられるかもしれない…。
けれど、身寄りのない自分には行く宛てなどどこにもない。
鬼殺隊も除隊した身…お館様にも頼れない…。
絶望の淵で、ゆきはふと、いつも優しく包み込んでくれた甘露寺の笑顔を思い出した。
翌朝、ゆきは縋るような思いで屋敷を飛び出し、甘露寺の屋敷を訪ねた。
「お屋敷のお掃除でもなんでもお手伝いするのでこちらに置いてもらえないでしょうか?」
頭を下げ必死に頼んでくるゆきに甘露寺は、困り果てていた。
「ゆきちゃん…無一郎くんは何とも思ってないわよ。大丈夫よきっと…」
刀鍛冶の里での出来事をすべて甘露寺に打ち明けていた。
「でも…あなた達二人は少し距離を置いたほうが良いのかもしれないわね…。少しの間だけここに居てもいいわよ。ただし…無一郎くんにはここに居ることは、伝えておくからね。」
甘露寺さんは、ニコッと笑いゆきを屋敷に迎え入れてくれた。