第103章 川辺の再会〜冨岡義勇【R強強】
その頃、里を後にしたゆきは、行く宛てがないため、皮肉にも無一郎の屋敷へと戻っていた。
「あれ? ゆき様…? お一人、ですか? 柱は?」
門をくぐったゆきの姿を認め、出迎えた隠が不思議そうに首を傾げる。
いつものように寄り添う霞柱の姿はなく、ただ俯いて、今にも消えてしまいそうな様子のゆきがそこに立っていたからだ。
あまりの元気のなさに、察しの良い隠の一人がそれ以上は何も訊ねず、「ひとまず、温かいご飯にしましょう。お部屋へどうぞ」と優しく促し、彼女の手を引いて奥へと連れて行った。
部屋で一人、ぽつんと座る。出された食事に箸をつける気力も湧かなかった。
結局、私は行く宛てなんてないんだ…。あんなに、無一郎くんに大口を叩いて飛び出してきたのに…
また彼の元(屋敷)に戻ってきている。
彼を拒絶し、すべてを振り切るようにして里を後にした。けれど、身寄りのない自分には、帰る場所も、頼れる人もどこにもいない。
結局は、彼の手のひらの上から逃れることすらできず、自らこの屋敷に舞い戻ってきた。
その残酷な現実が、身に染みて痛かった。
ゆきの目から大粒の涙がぽろぽろと零れ落ち、畳を濡らしていった。
開いた襖から見えるそんな彼女の悲痛な姿を、屋敷の遥か上空からじっと見下ろしている影があった。
無一郎の鎹鴉の銀子だった。
ゆき、ヤシキニ戻ッタワ。一人デ泣イテル…無一郎ニ、知ラセナキャ…!
無一郎の狂おしいほどの心配を理解している銀子は、大きな羽音を立てることなく旋回すると、すぐさま反転した。
待っている主人の元へ一刻も早くこの事実を伝えるため、銀子は風を切り、無一郎が滞在する鍛冶の里へと、まっすぐに引き返していった。