第103章 川辺の再会〜冨岡義勇【R強強】
美月の言葉に囚われ、身動きが取れないまま一日が過ぎようとしていた。
しかし、無一郎は居なくなったゆきが心配で堪らなかった。
翌朝、無一郎は美月の目を盗み、すぐさま案内役の隠の元へと向かった。
柱の権限を使い、里の出入りに不審な動きがなかったかを問い詰める。執拗な追及の末、隠の口から出た言葉は…
「…すでに、里を発たれたようです」
頭を強く殴られたような衝撃が走る。
ゆきが、自分に無断で、この厳重な里を抜け出すなど不可能なはずだった。
誰かが手引きしたのだ。そこまでして、僕の事嫌になったの?
無一郎は、自身の鴉である銀子を呼び寄せ、密かに命じた。
「…ゆきの後を追って。どこへ向かったか、突き止めるんだ」
銀子は無一郎の尋常でない気配を察し、音もなく飛び立っていった。
一人、ゆきの温もりが完全に消え失せた部屋に戻り、無一郎は畳の上にぽつりと座り込んだ。
膝の上で、きつく拳を握りしめる。
「君の両親は鬼に殺され、もう身寄りなんていないはずだ。僕の屋敷しか、君の行く当てなんてないのに…」
それに、まだ婚約だって解消していない。どれだけ拒まれようと、ゆきは僕の婚約者で、僕のものだ。自分に言い聞かせるような独り言は、暗い部屋の壁にぶつかって虚しく消えた。
その時、襖がそっと開き、美月が様子をうかがうように入ってきた。
「無一郎様…。刀鍛冶の方から伝言です。日輪刀の調整には、あと二、三日かかるそうです」
「…わかった」
「ゆきが心配ですか?」
「…うるさい」
「もしかしたら冨岡さんの所へ行っているかもしれませんね」
考えたくも無い事だった…行く宛がないのなら…あの人を頼るかもしれない…
無一郎は、早く里を出たくて仕方なかった。