第99章 逢いたくなったら〜冨岡義勇 時透無一郎 【R強】
屋敷の門をくぐると、そこには私は、お邪魔だろうと思うくらいの微笑ましい光景が広がっていた。
無一郎と美月が、楽しげに談笑していたのだった。
二人は、最近仲がとてもいい私と無一郎くんの仲が微妙になってから特に二人は急接近している様に感じられた。
私に気づいた美月さんが、話しかけてきた。
「甘露寺様の屋敷からの帰りですか?あれっ、手に持っているもの、お菓子ですか!?」
「あ、うん…無一郎くんに、作ったの…」
俯きがちに答えた私を見て、美月さんはあからさまに面白くなさそうな顔をした。
そして、わざとらしく無一郎くんの腕に絡みつき、甘えた声を出す。
「私も食べたいです…駄目ですか、無一郎様?」
「ゆき!いいよね?美月と食べても」
無一郎くんの、何の悪気もない、無垢でまっすぐな声…
その言葉に、胸の奥がキリキリと痛んだ。
本当は、嫌だよ。美月さんのために作ったわけじゃない。
昨日渡せなかったプリンも、今日甘露寺さんと心を込めて焼いたパンケーキも、全部、全部…無一郎くん、あなたを想って作ったものなのに…。
「…はい」
それなのに、私の口から出たのは、自分の心を裏切る返事だった。
二人は仲睦まじくお菓子を手に取り、寄り添いながら屋敷の中へと消えていく。
残されたのは、冷たい風と、私の虚しい独り言だけ…
無一郎くんを、選んで私は今のこの生活をしている。鬼殺隊も除隊し、義勇さんの継子も辞した…。
だけど…あの日から確実に…無一郎くんとうまくいっていない…
お互いどこか探り合っている。
今無一郎くんが、心を許せるのは美月さんなのでは?と思わずにはいられない…。
自然と、衣服の奥の紙切れに手が伸びる。
『逢いたくなったら、昨日会った川辺に来い』
脳裏に蘇るのは、義勇さんの不器用で、一途なあの眼差し…。
無一郎くんに向けていたはずの私の心は、今、激しい音を立てて揺らいでいる…。
ねぇ、義勇さん。私はどうしたらいいの?