第99章 逢いたくなったら〜冨岡義勇 時透無一郎 【R強】
夕食の賑やかな場から逃げるように、私はただ一人、薄暗い縁側に座り込んでいた。
胸を締め付けるのは、帰ってきた時に見た二人の睦まじい姿。
無一郎くんの隣は、もう私の場所ではないのかもしれない…。
ご飯を食べに行けば、またあの微笑ましい光景をみないといけない…。
そう思うと、どうしても足が動かなかった。
膝を抱えて、ぽつりと夜空を見上げる。冷たい夜風が、私の寂しさを余計に煽るようだった。
「あの…ゆき様」
静寂を破ったのは、申し訳なさそうに近づいてきた隠の声だった。
手には、温かそうな食事が乗ったお盆が握られている。
「食事を、お部屋にお持ちしましょうか?」
「え…いいのですか…?」
予想外の優しい気遣いに、ゆきは思わず顔を上げた。
隠の人は、困ったように表情で、全てを察したような、温かい眼差しでゆきを見つめている。
「ゆき様……その、柱と美月さんの間に入りにくいのではないですか?」
「……」
図星だった。
隠の何気ない、核心を突いた言葉に、心臓が跳ねる。
見抜かれていたんだ…。
私がいつしか、あの場所に居場所を失くして、怯えていた事を。
「はい…」
消え入りそうな声で、答えた。
視界が急にじわリと涙で滲んでいく…
無一郎くんの側にいたくて、彼を選んで、全てを捨ててここに来たのに。
義勇さんの優しい手のひらも、継子としての誇りも、全部置いてきてしまったのに…。
今の私は、夕食の席にすらつけない、迷子の子供のようだった。
そっと、着物の奥に忍ばせた紙切れに触れる。カサリと硬い音がして、あの不器用だけど私の全てを包み込んでくれようとした義勇さんの瞳が、鮮明に脳裏をよぎった…。
『逢いたくなったら、昨日会った川辺に来い』
その言葉が、私の凍えそうな心を、熱く焦がしていく。
無一郎くんを愛しているはずなのに、私の心は今、激しく揺れ動きながら、もう一人の大切な人の温もりを求めようとしている。
だけど…
駄目だよそれは…無一郎くんがいるもの…
無一郎くんが、私にはいる…
だから…
義勇さんを求めては駄目…