• テキストサイズ

鬼滅~甘い恋の話~時透無一郎、冨岡義勇★R18

第98章 努力〜時透無一郎 【R強強】


甘露寺と一緒に作ったお菓子は『プリン』という、洋風の珍しいものだった。

甘露寺さんは、わざわざ材料まで用意してくれて、二人で一生懸命に作った。

今日は、無一郎くんのお誕生日…。この世に生まれてきてくれてありがとうって、ちゃんと伝えよう

大切に包まれたプリンを胸に抱き、ゆきは足早に屋敷への帰路を急いだ。

義勇さんの事でずっとぎくしゃくしているけど、今日だけは真っ直ぐにお祝いをしたかった。

しかし、屋敷に着くと玄関には見慣れた二つの草履が並んでいた。

無一郎と美月のものだ。簪探しからもう戻ってきているらしい。

少しの胸騒ぎを覚えながらも、ゆきは音を立てないように廊下を進み、無一郎の部屋の前へと立ち止まった。

声を掛けようと襖に手を伸ばしたその時、中から二人の会話が聞こえてきた。

「美月、なんの真似? なんで夕食前にふろふき大根なんて持ってくるの?」

怪訝そうな無一郎の声に対し、美月は明るく弾んだ声を返す。

「今日は、無一郎様がお産まれになった日ですよね?」

「えっ? あ…そうだっけ」

「これ、私が作ったんですよ。喜んで頂けるかなと思いまして」

少しの沈黙の後、美月は嬉しそうに言葉を続けた。

「無一郎様。生まれてきてくださり、無一郎様に出会えて…私は幸せです」

その言葉は、ゆきが今日、無一郎に一番伝えたかった言葉そのものだった。

「…ありがとう。君ぐらいだよ、僕の生まれた日なんて覚えてくれてるのは」

無一郎のその優しげな呟きが、ゆきの胸を深く貫いた。

忘れてなんかいなかった。この手にあるお菓子は、無一郎くんを想って作ったものなのに…。

気づけば、ゆきは声を出さずに後ずさっていた。

足音を立てないよう息を殺し、来た道を戻ってそっと屋敷を抜け出した。

宛てもなく辿り着いたのは、夕闇が迫る川沿いの道だった。

胸に抱いているプリンの包みを高く上にあげた…。

川に投げようと思ったから…

その時包みを誰かに取り上げられ両手が軽くなる。

「これは、何だ?捨てるのか?」

その声に、胸が高鳴る体が一気に熱くなる…覚えているこの声…

優しい…声

ゆっくりと、振り返る…この羽織の柄…色…


   「ぎ、義勇さん……。」

/ 934ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp