第97章 忘れたい〜時透無一郎 不死川実弥【R強強】
その晩、無一郎くんに激しく抱かれた私は、結局彼とは眠らなかった。
「無一郎くん…お願い、一人で眠りたいの」
息を整えながらそう告げると、彼はひどく傷ついたような、切ない瞳で私を見つめ、静かに部屋を出て行った。
一人になった布団の中で、私は自分の身勝手さに涙を流す。無一郎くんの真っ直ぐな愛に溺れながらも、心のどこかでまだ義勇さんの不器用な体温を探している自分が、たまらなく嫌だった。
一方、部屋を後にした無一郎の胸中には、不安が広がっていた。
ゆきの様子が、ずっとおかしい。冨岡さんの継子を辞めてまだ一日しか経っていないのに、まるで彼に会えないことを … 離れてしまったことを、ただ一人で耐え忍び、辛がっているようにしか見えない。
僕のもとに来たのに、なぜか遠く感じる。あんなに深く抱いたのに、まだ足りない…
どうして朝まで隣にいさせてくれないのだろう。
君は今、一人で誰を想って泣いているの?
いくら身体を重ねてもすり抜けていくゆきの心に、無一郎の独占欲と切なさは、狂おしいほどに大きくなっていくばかりだった。
─ 翌日
無一郎は久しぶりに稽古をつけてほしいと美月に頼まれ、道場での手合わせに付き合っていた。木刀がぶつかり合う高い音が響く中、無一郎の思考はやはり、部屋に籠もったきり出てこないゆきのことばかりだった。
その頃、静まり返った屋敷の前に、一人の男が立っていた。風柱の不死川だった。
彼は、胸の奥にゆきへの密かな恋心を抱いていた。
ゆきが義勇の継子を辞めたという報せを聞き、心配でたまらなくなって訪ねてきたのだった。
いつもは周囲に荒々しい彼だが、ゆきの前でだけは、違った。
ゆきの部屋の前に立つと、不死川は彼女を驚かせないよう、いつもよりずっと静かに、優しく障子を開けた。
「ゆき、入るぞ。飯、ちゃんと食ってねェって、さっき隠から聞いた。」
「不死川さん?」
「冨岡の継子…辞退したんだってな…隊服も着てねェし鬼殺隊辞めるのか?」
ゆきは、力ない笑顔を不死川に向けた。
「はい…もう辞めました。鬼殺隊も…」
不死川が、驚いた表情をゆきに向ける…