第97章 忘れたい〜時透無一郎 不死川実弥【R強強】
「はい…もう辞めました。鬼殺隊も…」
力なく微笑むゆきの姿に、不死川の胸は激しく締め付けられた。
いつもなら荒々しい彼が、ゆきの前では優しくその大きな手を震わせている。
「…そう、か。お前がそう決めたんなら、俺ァ何も言えねェ。だけどな…そんな顔、してんじゃねェよ…」
消え入りそうなゆきを置いて、不死川はたまらず部屋を飛び出した。向かったのは、木刀の音が響く道場…無一郎の元だった。
「おい、時透ッ!」
怒号とともに踏み込んだ不死川は、無一郎に掴みかからんばかりの勢いで問い詰めた。
「何でゆきがあんなに元気がなくなってんだァ!? 冨岡の継子を辞めさせたのは、お前の仕業かッ!?」
無一郎は木刀を引くと、感情の読めない瞳で不死川を見据えた。
「…仕業って言われる筋合いはないよ。あの二人は、稽古以外のこともしてた。だから、もう二度と会えないようにしただけです」
「だからって…!」
不死川は言葉に詰まった。義勇への嫉妬、そして何より、傷つきながらもゆきを強く求める無一郎の歪な愛が、その言葉から痛いほど伝わってきたからだ。
「あれじゃあ、ゆきの心が病気になっちまうぜェ…」
「ならないよ」
無一郎は一歩踏み出し、不死川の言葉を冷たく遮った。
「僕がこれから、毎日ゆきを大切にする。身体も、心も、全部僕だけで満たしてあげるから、触らせないし、誰のところにも行かせない。…だから、部外者はすっこんでてよ」
そう言い終えると無一郎は、また美月との手合わせを再開した。
不死川は、言葉を詰まらせながらまたゆきの部屋へと戻ると、ゆきは、ずっと元気がなさそうな様子だった…
不死川は、堪らず自然にゆきを誘う…
「ゆき!気晴らしに街に出ねェか?」
急な誘いにゆきは、驚いたが気晴らしに良いと考え不死川と共に、街に繰り出した。