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鬼滅~甘い恋の話~時透無一郎、冨岡義勇★R18

第96章 さようなら〜冨岡義勇


夕暮れが道場を薄紅色に染め始めた時だった。義勇さんが、稽古を終える言葉を告げた。

「今日の稽古はこれで終わろう」

いつもより早い切り上げに、私の心臓が止まりそうになる。

「えっ?いつもより早くないですか?」

努めて平静を装ったが、声が僅かに震えた…。

「昨夜、雨にたくさん打たれただろう?体は疲れているはずだ。今日は、もうやめとこう」

その優しさが、今の私には何よりも残酷だった…。近頃の鬼の出現減少を引き合いに出し、義勇さんは穏やかに微笑む。

「そう焦らずとも、剣技を磨く時間はたっぷりある。また明日、稽古しよう」

また明日

もう明日はないんです…義勇さん…今日が最後なの…

もう二度と、この道場であなたの背中を追うことはない。

あなたと肩を、並べて戦う日々は、この瞬間に幕を閉じる。私たちはもう、別々の道を歩む運命なの…。

「今日の…昼食はとても旨かった…。また作ってくれるか?」

照れた表情で、義勇さんが私を見つめてくる。

私は視界が滲んでしまうのを懸命に堪えた。ここで泣いてしまえば、何もかもが崩れてしまう気がした。

「…」

「す、すまない…今日のゆきがあまりに昔のような雰囲気だったので、つい…」

義勇さんは、頭を掻きながら背を向けた。

言わなければ…今日で、継子を解消すると…無一郎くんが、今日お館様に話している事を…

「義勇さん!実は…今日を限りに、継子を辞することに決めました。お館様には、無一郎くんがその旨を今日伝えているはずです」

「えっ?」

義勇は、驚いた表情で振り返った。

「だから…明日のお稽古はもう…ないんです。」

「何を勝手な事を…駄目だ!」

ゆきは、悲しく微笑みながらゆっくりと顔を横に振る。

義勇は、気が付くとゆきを強引に抱きしめていた。

「駄目だ…お前は、俺の継子だ!」

腰に背中にまわした義勇の腕が、きつくゆきの体を自身に引き寄せる。

ゆきは、抵抗するどころかそっと義勇の背中に手を回した。

「義勇さんのこの香り…好きでした…。抱きしめられると義勇さんから大人な香りがして…安心するんです。」

ゆきのその言葉を聞き、義勇はもっともっと強く抱きしめた。

「俺もお前のこの香りが好きだ…甘い香り…俺から離れる事は許さない…」





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