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鬼滅~甘い恋の話~時透無一郎、冨岡義勇★R18

第96章 さようなら〜冨岡義勇


午後の日差しが、道場に光を落とす。

私の身体は「継子」として受ける最後の指導を、一分一秒でも長く刻もうと必死だった。

明日には、すべてが変わる。

継子を解消したら多分私は鬼殺隊を離れさせられると思う…

無一郎くんの元へいずれ嫁ぐ…。

そこには静かで安全な日常があるけれど、この張り詰めた空気も、命を懸けて戦う日々も、もう二度と戻らない。

私を導いてくれる義勇さんの背中も、もう遠い存在になる…

「もう少し腰を落として構えてみろ」

義勇さんの大きな手が、私の腰に触れる。

その指先が触れた熱が、内側に押し込めていた本心を激しく揺さぶった。

継子を辞めたくない。まだ皆と戦いたい…

「はい」

元気に装った声で返事をして、深く息を吸い込む。

「足をもっと踏み込んでみろ」

再び義勇さんの声が重なる。背後から添えられたその掌は、驚くほど温かい。これが、最期の教えになる。

もっとあなたといたい。任務に出て、肩を並べて戦い、鬼を倒したい。

そんな身勝手な願いは、誰にも言えない秘密だ。

今日という日が、私たちの関係の終着点であることを、義勇さんはまだ知らない…。

この穏やかな午後の稽古は、もう二度と来ない

「…いい構えだ」

不器用な褒め言葉が、胸を締め付ける。

その言葉を素直に喜べない自分がいた。この優しさを、永遠に感じていたい。

私は涙を堪え、ただ一心に剣を振った。

汗が滴り、息が上がる…

この痛みも、この熱さも、明日には思い出になってしまう。

無一郎くんとの約束された未来へ向かう足は、なぜか重く地面を掴んでいた。

窓から入り込む風に、道場の匂いが混じる…。

義勇さんの整った横顔を盗み見ると、義勇さんはまだ、明日も変わらず私が隣にいると信じているような、柔らかな眼差しを向けていた。

その残酷なほどの信頼が、私の心を引き裂く…。

けれど、泣いてはいけない。私は必死に唇を噛み締め、最後の最後、義勇さんの背中を目に焼き付けた。

あと、数時間で

この道場の空気が、私の世界から消える…。

どうかこの時間が、永遠に続いてほしい。

そんな願いを、私は鋭い剣筋にすべて込めた。

あなたの継子で、いれて…幸せだった…。

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