第95章 切ない雨宿り〜冨岡義勇
ゆきは雨に打たれ、身体を震わせながら無一郎の屋敷へ戻ってきた。
門をくぐった先に影が見える、よく目を凝らすと無一郎が立っているのが見えた。
「無一郎くん…?」
ゆきの声に反応するように、彼はゆっくりと振り返る。
濡れた前髪の隙間から覗く瞳は、どこか寂しげに光っていた。
「おかえり。遅かったね」
無一郎は怒ることも問い詰めることもなく、ただゆきに歩み寄る。
そして、雨で冷え切ったゆきの頬を、無一郎自身の体温で包み込むようにそっと両手で挟んだ。
「…無一郎くん、どうして外に?」
「君を待っていたんだ…明け方に帰ってくると鴉に聞いたから」
無一郎はそう言うと、ゆきの額にそっと自分の額を触れさせた。
冷たい雨の匂いと、無一郎の体温が混ざり合う。
無一郎はゆきを抱き寄せ、そのまま屋敷の奥へと導いた。
部屋に入り、濡れた着物を脱がせながら、無一郎は一度も目を逸らさなかった。
まるで、義勇との跡が体のどこかに付いているのではないか?と疑っているように…体を食い入るように無一郎は見ていた。
「ねえ、ゆき ずっと街を雨の中巡回していたの?」
ゆきは、返事に困り口籠ってしまった。
「…二人で、何処で何をしていたの?」
「街の警備を…」
「嘘だよね?君が他の誰かの体温をまとって帰ってくるたび、僕は壊れてしまいそうになる」
無一郎はゆきの肩に深く顔を埋め、痛いほど強く抱きしめた。
無一郎はゆきの身体に残る義勇の気配を拭い去るかのように、何度も何度も首筋や鎖骨に唇を落とす。
「無一郎くん…ど、どうしたの?」
「君は僕だけのものだ」
無一郎はゆきを布団へと押し倒し、激しく唇を奪った。
外の雨音は次第に激しさを増している。
無一郎が、唇を離し荒い呼吸をするゆきに向かい決定的な事を告げる…
「これ以上…冨岡さんの所へ行かせたくない。」
「え?」
「冨岡さんの、いや…水柱の継子を解消して欲しい。」
ゆきは、驚き起き上がろうとするが、無情にも無一郎に、布団へと押し付けられて動けない。
「そして、僕の婚約者として今度こそ正式に迎え入れる。」
これは、喜ばしい事なのに…何なんだろう…胸が痛い。
すごく痛いよ…