第94章 新たな生活〜時透無一郎 冨岡義勇【R強】
屋敷で刀の手入れをしていた無一郎は、障子の向こうに羽音がするのに気付いた。
義勇の鎹鴉から「今夜ノ警備、帰宅ハ明ケ方ニナル」との報せを受けた。
無一郎は刀を握る手に力を込め、静かな溜息をつく。
「…また、冨岡さんか」
無一郎を選んだはずなのに、ゆきの心は空回りしている。
義勇はしのぶとの縁を切り、ゆきに愛していると本心を伝えた。
そんな義勇の孤独を理解し、情を断ち切れないゆきの弱さを、無一郎は見抜いていた。
ーーー
すっかり日が沈んだ街を、義勇とゆきは並んで歩いていた。
無言で歩くぎこちない二人…そんな二人にまた運命の悪戯が起きる…
突如として雨が降ってきたのだった。それも強い雨だった。
義勇は、ゆきを軒下へと導いた。
濡れた隊服が冷たく肌に張り付く中、義勇がふと、ゆきの肩へと手を伸ばした。
反射的に半歩退いたゆきの動作に、義勇の表情が悲しげに変わる。
「…義勇さん、離れてください」
ゆきにそう言われても、義勇は怯まない。
むしろ、その拒絶が呼び水となって、義勇の理性を崩していく。
義勇は一歩詰め寄り、行き場を失ったゆきを軒下の壁との間に追い込んだ。
「俺は、お前を愛している。胡蝶との縁も切った。…お前が誰を選ぼうと、俺のこの想いまで無かったことにはさせない」
義勇の吐息が、ゆきの首筋を撫でる…。
義勇はゆきの肩を力強く掴み、逃げ場を塞いだ。
拒むゆきの手を片手で封じ込め、義勇はもう片方の手で頬を熱く撫で上げる。
「そんな目をするな。俺の愛を拒むのか? 嫌いになったのか?」
義勇の声は痛々しいほどに甘かった。
熱っぽい瞳に見つめられ、ゆきの気持ちを揺さぶる。
拒めば拒むほど、義勇の情熱は激しくゆきを絡め取り、翻弄する。
「義勇さん、いけません、私には…」
「いい。…お前が俺を愛せなくても、俺はお前を愛している。こうして、お前に触れていられるだけでも幸せなんだ…。」
雨はますます激しさを増していく…
義勇は、ゆきに密着し離れない。
ゆきは、義勇の腕の中で彼の激しい鼓動を間近で聞きどうすればいいのか分からなくなっていた。