第94章 新たな生活〜時透無一郎 冨岡義勇【R強】
「今日は、どうだったの?」
無一郎くんが、私の髪を撫でながら今日の稽古の事を聞いてきた、その指先は優しく、安心する…。
「別に、いつもと変わらない稽古だったよ」
私は努めて平然を装う。義勇さんの警備に向かうどこか寂しそうな背中、そして隠たちから聞いた義勇さんの話し…。
そのすべてを胸のうちに秘めて
「ふーん」
短い返事と共に、髪を撫でていた手が止まる。不意に無一郎くんの体温が私を包み込み、そのまま背中からぎゅっと抱きしめられた。
「無一郎くん…苦しいよ」
「…なにも、されてない?」
耳元で囁かれる声は、妙に重い。私は小さく笑って否定した。
「されないよ」
「信用できないからなぁ…君たちは」
抱きしめる腕に、さらに力が籠る。
無一郎くんへの想いは本物だ。
けれど、義勇さんのあの寂しそうな背中が、私の脳裏から離れない。
食事もろくに取らずに、たった一人で巡回を続ける義勇さん。
気にしたくなくても気になってしまう…。
「ねえ、無一郎くん。そんなに力いっぱい抱きしめなくても、私はここから逃げないよ」
「逃げない?」
無一郎くんは私の肩に顔を埋めたまま、小さく呟く。
その言葉には、私の知らない彼の不安や、義勇さんという存在への根深い嫉妬が潜んでいた。
「ずっと、傍にいてくれるよね」
無一郎の腕の力は緩むことなく、むしろ強まっていく。
ゆきは無一郎の背中にそっと手を回した。
私は無一郎くんを愛している。
そう…私をこんなにも一途に想ってくれる無一郎くんが好き。
私を、あの日鬼から救ってくれた命の恩人…。
「明日も、稽古に行くの?お館様が鬼の出現も減ったから自由にしていいって言ってたじゃない?美月の簪探し一緒に行く?」
甘えるように言ってくる無一郎にゆきは返す。
「私は唯でさえ使えない継子だから…。こういう時に稽古して強くならないと」
無一郎は、つまらなさそうに寝返りをうってゆきから離れた。
拗ねた背中にゆきは、頬を寄せる。
「おやすみなさい…無一郎くん」
するとすぐに、無一郎は振り返った
「何言ってるの?まだ寝かさないよ」
ゆきの寝間着の腰紐が解かれ…長い夜の営みが始まる…