第93章 産屋敷邸での波乱〜時透無一郎 冨岡義勇【R強】
「義勇さん!?ちょっと待ってください、離してください!」
中庭へと続く廊下、ゆきは必死に声を潜めて義勇の裾を掴んだ。
柱たちが集う場所へ引きずられていく現状に、鼓動が早くなる。義勇は構わず、迷いのない足取りで進んでいく。
「皆さんが集まっている場所で、さっきお館様に言ったことをそのまま言うつもりですか?そんなことをすれば…大変なことになります!」
ゆきは廊下の角で立ち止まり、義勇の手を両手で自分の方にぐっと引き寄せた…だが止まらない。
「だめです、やめてください。今のままでいいじゃないですか。義勇さんはしのぶさんと、私は無一郎くんと。そうすれば誰も傷つかずに済むんです。それが一番の平和なんです!」
ゆきの言葉に、義勇はふと足を止めた。振り返った義勇は、少し悲しそうだった…。
「……俺は、傷つく」
低い声で、彼は言った。子供のような、あまりに純粋で不器用な眼差しで…。
「お前がいい。お前以外では、俺は誰とも…」
その真っ直ぐすぎる拒絶と愛情の深さに、ゆきは言葉を失った。
いつもの冷静な義勇さんじゃなかった…
「とにかく、会議の前にそんな話を皆さんにするのだけは…やめてください。お願いします」
ゆきが困り果て、悲痛な表情で懇願すると、義勇は長い沈黙の後、小さく息を吐いて頷いた。
「…わかった。中庭では口を閉ざそう」
強張っていたゆきの肩から力が抜ける。しかし、義勇の言葉はそこで終わらなかった。
「だが、会議が終わった後に。胡蝶と時透には俺から話す」
「義勇さん!」
「お前の覚悟も、時透や胡蝶の想いも軽んじているわけではない。だが、俺の想いもまた、誰にも譲るつもりはない」
「わ、私は昨夜無一郎くんと沢山愛し合いました!もう義勇さんが嫉妬するくらい!口付けだって沢山しました!そんな私を愛せないでしょ?」
義勇は一瞬、何事もなかったかのように振る舞おうとしたが、脳内で言葉が処理されるにつれ、瞳が激しく揺れ、手は拳を握りしめていた…義勇は震える声で搾り出した。
「…汚らわしい」
「だから…もうこのままで…」
そう言いかけた唇が、塞がれる。
「んっ…はっ…やめっ」
パチン//ゆきは、思わず義勇の頬を叩いてしまった。