第93章 産屋敷邸での波乱〜時透無一郎 冨岡義勇【R強】
ゆきの言葉を、無視するように義勇の腕は一切の隙間を作らず、ゆきを自身の胸元へと閉じ込めている。
抱きしめるその力には、ただの強引さだけではない、数日間募らせた想いが溢れていた。
義勇はゆきから目を逸らさない。
ゆきは気まずさに視線を彷徨わせるが、義勇の太い親指がその震える唇をなぞると、逃げ場を失ったように身体が硬直した。
拒もうと顔を背けても、義勇は大きな手で優しく正面を向かせる。
「この柔らかな、可愛らしい唇も…俺のものだ」
甘い声で囁く…義勇の顔がゆっくりと近づく…。
断る隙すら与えないほど自然に、義勇は唇を舌先でなぞった。ゆきが小さく声を漏らした瞬間、義勇の唇が重なり合う…。
何度も角度を変え、容赦なく舌を絡め取り、吸い上げる。
義勇の胸を叩くゆきの指先も、義勇の揺るぎない腕の前では無力だった。
意識が曖昧になり、足の力が抜けてゆく。
酸欠で朦朧とする中、ゆきの身体は崩れ落ちそうになるが、義勇は決して離さない。崩れゆくゆきをしっかりと支え、口付けを続ける。
ようやく唇が離れると、ゆきは荒い呼吸を繰り返し、義勇の胸に倒れ込んだ。
思考が停止するほどの口付けに、返事すらできない。
義勇はそんな彼女の髪に愛おしげに頬を寄せ、その甘い香りを深く吸い込んだ。
「すまない。気持ちが先走りすぎた。苦しかったな、悪かった」
反省の言葉を口にしながらも、義勇の腕からゆきが解放されることはない。荒い息を吐きながら、二人はただ重なり合ったまま動かない。
刻一刻と迫る柱合会議の時間。
産屋敷邸へ向かえば、そこにはしのぶがおり、そして無一郎もいる。
「立てるか?そろそろ出発しようか」
義勇は、そう告げながらぐったりしたゆきをもう一度ぎゅっと抱きしめた。
「お前に、触れていると安心する。」
ゆきは、よろけながら義勇の胸を押し退け体を離した。
「もう、そんな事言わないでください…私は無一郎くんに抱きしめられると安心します」
「ゆき…」
「しのぶさんとお幸せに」
「ゆき!?俺はお前しか…」
「出発しましょう。産屋敷邸へ」
ゆきは義勇が言いかけた言葉を遮り腕の中から逃れ部屋を出た。