第90章 好き〜時透無一郎 冨岡義勇【R18】
ゆきは、無一郎を探して中庭に出ていた。
どこかに居るはず…。ふと井戸の方を見ると無一郎が、ぼーっと空を見上げ立っていた。
「無一郎くん…」
ゆきの声に、無一郎は僅かに反応して体が動いたが振り返りもせず空を眺めたままだった。
「昨夜の事…正直に全部話すから、そのかわり無一郎くんも私に隠していることを全部教えて…。」
その言葉に、無一郎はゆっくり振り返った。
「わかった…」
ゆきは、昨晩の出来事、今朝の出来事全部つつみ隠さず話した
義勇さんに、抱きしめられた事一晩同じ布団で眠った事…今朝の口付けも全て…。
無一郎は、切なげに笑った
「僕の隠していた事を話すよ…美月の言いなりになぜなっていたのかも…。先日僕は、美月の部屋で眠ってしまったんだ…その時に、君と美月を勘違いして口付けをしてしまった。」
「えっ?」
「それを、秘密にしてもらうために美月の言いなりになっていた。縁側で抱き合っていたのも美月にお願いされたからだよ」
無一郎は、切なそうに微笑む…
「笑っちゃう…僕の小さな過ちに比べて…君は…もうほぼ冨岡さんに、気持ちが動いてるんじゃないかな?」
無一郎の諦めたような笑顔…
「…もういいよ」
寂しそうにつぶやき、くるりと背を向けて歩き出そうとした。
その背中が、まるで遠くへ消えていってしまいそうで。ゆきは、思わず後ろから無一郎の細い腰にしがみついていた。
「行かないで…! 義勇さんのこと、揺らいじゃったのは否定しない…。でも、無一郎くんが美月さんと口付けしたって聞いて、胸が張り裂けそうに痛かった…。私、無一郎くんのことが好きだよ…」
背中で溢れたゆきの涙が、無一郎の隊服を濡らしていく。
無一郎はぴたりと足を止め、深く息を吐いた。
そして、ゆっくりと振り返りながら、ゆきの体を正面から強く抱きしめ直す。
「君は…本当に、意地悪で自分勝手だ…。僕の過ちを苦しかったって嘆くけど…僕の方が傷ついてるよ…かなり」
「む、無一郎くん…」
「本当に、僕だけが好き?ならば婚約してよ…前に戻ろう…安心させてよ!」
ゆきが、うん…と返事をしようとしたその時だった…。
「待ってくれ!」
その声に、無一郎はまたため息をついた…。