第90章 好き〜時透無一郎 冨岡義勇【R18】
「冨岡さん…?」
無一郎が、鬱陶しそうな声を出した
。
襖の向こう、困惑する美月の背後に佇んでいたのは、義勇だった。
「ゆきが嫌がっている。それに、責めるな。可哀想だ…お前を案じていただけなのに」
義勇のどこか不器用な声が部屋に響く。
義勇は、部屋の中に目をやった…服をはだけさせられ、涙目で畳に伏せるゆきの姿…
義勇さんは、私を助けようとしてくれているの?
けれど、その優しさが今の状況をさらに拗らせていく…。
無一郎の表情がみるみる冷たくなっていく。
ゆきを組み伏せるのをやめ、無一郎はゆっくりと立ち上がる。
「あなたに言われたくありません。胡蝶さんがいるのに、ゆきに師範以外の立場で接しないでください。ゆきは、僕のものだから!」
無一郎は、義勇を睨みつけた。
「無一郎、くん…」
ゆきは震える手で乱れた隊服を手繰り寄せ、胸元を隠しながら無一郎の背中を見上げた。
義勇さんに食って掛かり今にも壊れそうなほど危うい無一郎くんの横顔を見ていると、胸が締め付けられる…。
「ゆきと昨夜から朝まで何をしていたんですか?胡蝶さんがいながら…二人は…」
義勇の目が泳ぐ…
俺は、胡蝶より…ゆきが好きなんだ。
ふとゆきと目が合う…怯えた目で俺を見ている。
「昨夜は、落ち着かせてから隠に案内させた部屋で休んでもらった」
無一郎は、鼻で笑う
「嘘つき」
「嘘ではない、ゆきはお前の心配をしていた」
義勇の咄嗟に出たウソだった…。
無一郎は、少し考えてから「わかりました」と義勇に答えた。
乱された隊服を、完全に整え終えたゆきが目の前の無一郎の隊服の裾を掴んだ。
「あの…無一郎くん…」
「触らないで」
無一郎は冷たく突き放し、ゆきの手を振り払った。
その目には、義勇への激しい敵意と、ゆきへの不信感でいっぱいだった。
「君も、冨岡さんも、絶対に許さないから…怪しすぎる」
無一郎は、部屋を荒々しい足音を立て出て行った。