第90章 好き〜時透無一郎 冨岡義勇【R18】
「無一郎くん…!」
肩を激しく上下させながら、ゆきは開け放った襖の隙間から、無一郎の姿を見た。
無事だった。
その姿を確認できただけで、心の底から安心できた。
けれど、ゆっくりとこちらを振り返った無一郎の瞳は、いつもと違ってどこか冷たく感じた。
安堵から、無一郎のもとへ一歩を踏み出そうとした、その時…。
「…朝帰りしたの?」
低い無一郎の声が室内に響く。
その痛い一言に、ゆきの動きがぴたりと止まり、忘れようとしていた罪悪感が、一気に脳裏を支配する。
無一郎くんが戻らない不安に耐えかねて、私は義勇さんを頼ってしまった…。
いくら引き止められたからとはいえ、自分の弱さで、あの屋敷に身を寄せ、あまつさえ今朝まで一緒に眠っていた…。
そして…さっき口付けを…
乱れた髪、そして、まだ熱を持って赤く腫れぼったい唇。
無一郎の視線がそれらを的確に捉え、すべてを察したような目で見てくる…。
無一郎はゆっくりと立ち上がると、ゆきとの距離を詰めていく。
「悪い子だなぁ。僕がちょっと目を離すと、すぐに冨岡さんの所に行く…」
そう言って、冷たい指先が、ゆきのまだ熱い唇に触れた。まるで、全てを知っているかのように、少しだけ強く、なぞるように…。
「心配して損しちゃったな。…ねぇ、僕がいない間冨岡さんと何をしていたの?」
その質問に、ゆきは固まり動けなくなった…。
「僕が、帰ってこないのをいいことに冨岡さんの所に居たんでしょ?ねぇ…何していたの?僕に言えないことしていたの?朝帰りなんかしちゃってさぁ。」
「む、無一郎くんが、連絡もなく帰って来なかったから…心配で、柱の義勇さんなら情報を共有しているかと思い…聞きに行っただけだよ…」
無一郎は、冷めた表情を崩さない…どんどん顔がゆきに、近づいていく…
「君は、困ったらすぐに冨岡さんに頼るよね?」
「そんなことない!」
「おっと…何?怒っているの?」
心配していたのに…無一郎くんそんな言い方しなくたって…
でも…そっか、私が悪いよね…朝帰りして…そりゃおかしいよ…
だけど、無一郎くんだって美月さんと…
縁側で抱き合っていた…それに朝まで一緒に部屋に居た…