第90章 好き〜時透無一郎 冨岡義勇【R18】
隠たちが去り、完全に二人きりになった室内。義勇のすぐ隣に座ったゆきは、大好きな料理を嬉しそうに頬張っている。そんな彼女の横顔を、義勇はただじっと見つめていた。胸の奥が、切ない…
「ゆき…美味いか?」
「はい!」
隣で無邪気に微笑む顔が愛おしくて、同時にたまらなく苦しい。時透が無事で嬉しそうな顔
「時透を出迎えて、今日は何をするんだ?」
「え…?」
不意の問いに、ゆきが動きを止める。答えに困り、不思議そうにこちらを見上げる彼女との距離を、義勇は一気に詰めた。
「ぎ、義勇さ…?」
あまりの急接近に、驚いたゆきの手からぽろりと箸が転がり落ちる。それを拾う暇さえ与えず、義勇は彼女の肩を引き寄せ、胸へと抱きすくめた。耳元に触れる熱い吐息…
「俺が時透なら…」
義勇の大きな手がゆきの顎を優しく上向かせ、その唇に自分の唇を重ねた。
「んっ…//」
深い、深い口づけ。有無を言わせぬ舌の侵入に、ゆきの頭は一瞬で真っ白になる。何度も角度を変え、舌を絡ませる。
重なる義勇の身体の熱が、じわじわと彼女の体を疼かせていく。
息が続かなくなり、涙目で胸を叩くゆきをようやく解放した義勇は、濡れた唇を指でなぞった。
「出迎えた瞬間、抱きしめて…こうして口づけを交わす。…それだけでは、止まらないかもしれない」
「ぎ、義勇さん!」
いきなりの行為に赤面し、慌てて義勇から離れようとするゆき
だが、その両手首は、義勇の強い力で畳へと押し倒された。
覆い被さる義勇…ゆきの呼吸が乱れる。
「ぎ、義勇さん…やめて…だめです!」
「だめではない。やはり俺は…お前が好きだ」
愛おしそうに、歪む義勇の瞳…。
「好きって…しのぶさんがいるじゃないですか!?」
「お前が、いい…。好きだ、好いている」
「ぎ、義勇さん…」
これ以上ここに、居ては駄目だ…そう本能で察したゆきは、必死の力で義勇の手を振り解いた。
「ごちそうさまでした…」
乱れた隊服の襟元を抑え、逃げるように部屋を飛び出していくゆき
一人取り残された義勇は、まだゆきの甘みが残る唇に触れ、行き場のない感情をぶつけるように、膝の上の拳を強く握りしめていた。