第84章 柱の命令〜冨岡義勇 時透無一郎【R強】
義勇は、苛立ちを隠そうともせず、深く、重い吐息をついた。
「せっかく克服できたのにまた山賊の記憶が蘇ったのか…」
低く怒りのこもった声…。
「…はい…だから触れられるのが少し怖いです…。」
昨夜ゆきは、時透に抱きしめられていた…時透は大丈夫だと言うことなのか?
とにかく…そのゆきを襲った隊士を俺は許せない…。
「俺は今から、隊士宿舎へ行く。…柱として、直々に処罰を下しにな」
それだけを告げると、義勇は足早に部屋を後にした。
ゆきは震える手で乱れた隊服を整えながら、体を震わせた。
義勇さんが、宿舎へ行き私の事で騒ぎになれば
ますます義勇さんと私の関係を怪しまれる…
「待って……行かないで、義勇さん!」
ゆきは慌てて立ち上がり、門へと走り出した。
しかし、柱の脚力に敵うはずもない…。
門に辿り着いたとき、そこにはすでに義勇の影はなかった。
「…っ、急がないと!」
ゆきは必死に走った。
走って走って追いかけるが、追いつくわけもなく…
しのぶさんの耳にでも入ればますます二人の邪魔をしているように思われる、それにしのぶさんに、嫌な思いをさせてしまうかもしれない…。
早く…早く義勇さんに追いついて止めなきゃ。これ以上、私に深く関わって良いことなんてないもの
一方義勇は、もう隊士宿舎に到着し宿舎では、隊士達は、訓練の最中だった。
柱の姿が、見え皆ざわついていた。
「水柱様だ…何しに来たんだ?」
「稽古つけてもらえるのかも!」
「きゃー素敵ね…」
男性の隊士も女性の隊士も、間近で見る柱の姿に興奮していた。
中庭の廊下を歩く義勇に、この宿舎の管理職についた三田が声をかけた。
「柱!お久しぶりです!」
懐かしい声に義勇は、反応して振り返った。
ーその頃宿舎の裏手で、誰かが震えながら謝る声が響いていたー
「す、すみません…許してください…」
「駄目…許さない…」
「こ、怖がらせてやろうと思っただけなんです…」
「じゃあ僕も、君を怖がらせようかな?いいよね…」
無一郎が、ゆきを襲った隊士に日輪刀の切っ先を向けて追い詰めていた…。