第84章 柱の命令〜冨岡義勇 時透無一郎【R強】
義勇が黙りこくると、しのぶは吸い寄せられるように義勇に寄り添った。その体からはゆきの甘い香りはしなかった。
「ゆきさんを追いかけて、会えましたか?」
義勇は何も答えず遠い目をしていた。
「その寂しさ私で、埋めてください…お付き合いしているのですから私達は…」
そう言ってしのぶはゆっくりと義勇を、押し倒した…身を任せる義勇…
実は心の中では、激しく葛藤していた…。
しのぶを恋人として選んだはずなのに、自分は彼女を女性として大切にするような振る舞いができていない…。その申し訳なさに胸が痛んだ。
たから…しのぶを受け入れることにした
しかし、二人の距離が近づけば近づくほど、義勇の頭の中には別の光景が浮ぶ…。
窓の外から見た、時透に甘えるゆきの姿、そして潤んだ瞳
その記憶が、義勇の心を締め付けていく…
このまま気を紛らわせる為に、胡蝶を俺は抱くのか?
「…すまない」
熱くなるはずの場面で、義勇は急に動きを止めた。
「悪いが…今日は無理だ。これ以上は、できそうにない…本当にすまない…」
「冨岡さん」
しのぶの表情を直視できず、義勇は乱れた隊服を直すと、逃げるように部屋を出ていってしまった。
一人残されたしのぶは、ふっと笑った…
あなたの側にいて私は気付いていましたよ
ゆきさんがまだ時透くんの継子だった頃…柱合会議で、会う度にあなたがゆきさんに心惹かれている事を
側で見ていて私は気付いていました…
縁側に出た義勇は、月を見上げていた。
ゆきの手首の怪我、そして寛三郎の散乱した羽根…そこに落ちていたゆきの隊服のボタン…。
寛三郎の何か隠した様子…。
あそこで何があったのか?ゆきがどれほどの恐怖を感じていたのか。
何に、巻き込まれて俺にそれを隠しているんだ?
「あいつに…何があったんだ…」
守りたかった人のそばに居られなかった後悔と、時透への激しい嫉妬…。
だが、俺を一途に想ってくれている胡蝶を選んだからお前を、側で寄り添い守れなくなった。
だからゆきも、この屋敷から出て行った。
近くで、ずっとゆきを、見ていれないもどかしさで気が狂いそうだ…。
ぐちゃぐちゃになった感情で、義勇の胸はいっぱいになっていた。