第84章 柱の命令〜冨岡義勇 時透無一郎【R強】
義勇は、窓の外から二人を見ていた。
月明かりが差し込む部屋で、二人の影が重なっている…。
窓の外そんな二人を見つめる義勇の胸には、嫉妬心が渦巻く…。
手首の怪我、緩んでいたボタン、そして必死に何かを隠そうとしていたゆき…
ゆきの後を追い今目にしているのは、時透に甘えるお前の姿…。
時透に抱きしめられ、何かを訴えている姿を見ると胸が張り裂けそうだ…。
その潤んだ瞳は、俺がどれほど望んでも自分には向けられることはない…。
俺はゆきを救いに来たつもりだった…
けれど…側には時透がいる…
中に入ることも、声をかけることもできない
ただ、外で見守るしかできない…
背を向け、逃げるようにその場を去ろうとした義勇の肩に、パサッと重みが乗る…。
鎹鴉の寛三郎だった。
「先ほど、近くの茂みで何があった?羽根が落ちていた…それに、このボタンも。ゆきのものだな?」
落ち着いた声で、寛三郎に問う義勇
だが、寛三郎は誤魔化すように、欠伸をひとつして
「忘レタ、忘レタ」と知らないふりをした。
「…お前という奴は」
呆れと、やり場のない感情を吐き出すように、深い溜め息をつくと、義勇はへそを曲げた子供のように寛三郎に背を向け、一言も発さずに自身の屋敷へと戻って行った。
宿舎のゆきの部屋では、無一郎の優しい手の温もりに包まれてゆきは、眠りに落ちていた。
僕の腕の中で、すやすやと眠るゆき…何かあったのは、確かだけど君が話したくなるまで深くは、聞かない…。
山賊の事を思い出して怯えるゆきを、見ると胸が痛む…。
無一郎は、そっと眠りについたゆきをベッドに寝かせ布団をかけてやった。
唇に、軽く触れ優しい口付けをひとつ落とした…。
ふと、部屋の端に置いてあった破れた隊服に目がいった。
「ちょっとこの宿舎でのゆきの生活を、調べないとね…ゆきに意地悪するやつは…僕が許さない…。」
義勇は、モヤモヤした気持ちで屋敷へと戻ってきた。いらいらしながら部屋のふすまを開くと…
まだ部屋には、しのぶの姿があった…。
「冨岡さんおかえりなさい」
「胡蝶…待っていたのか?」
「待っていました…」
「…そうか…悪かった」