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鬼滅~甘い恋の話~時透無一郎、冨岡義勇★R18

第83章 新しい生活


翌朝、義勇の屋敷へ向かうため宿舎を出たゆきを待っていたのは、清々しい朝日ではなかった。

「お出かけか? 今日はどの柱に可愛がってもらうんだよ」

宿舎の門を出た角を曲がった先で、昨日絡んできた隊士の一人が行く手を塞いできた。

卑屈な笑みを浮かべた男は、抵抗する間もなくゆきの細い手首を掴むと、力任せに道沿いの茂みへと引きずり込んだ。

「離して…!」

「声を出していいのか? 柱のお気に入りがこんな場所で無様な姿を見せてるって、皆に知れ渡るぞ」

不意を突かれたとはいえ、相手は選抜を潜り抜けた隊士だ。…自分は…選別を受けてすらいない…それに、あまり才能も無いことに気付いている…。

それでも、日輪刀に手をかけ応戦しようとした。

だが、体格差で圧倒され、地面に組み伏せられてしまう。

背中に伝わる土の冷たさと、男のひりつくような殺気が、昨夜呼び起こされた「山賊への恐怖」を再び思い出させた…。

「柱を夢中にさせる体がどんなもんか、じっくり拝見させてもらうぜ」

男の手が隊服の詰襟に掛かり、一つ、また一つとボタンがはずされる。

気が動転し呼吸が乱れる中、強引に口を塞がれ、酸素が途絶えていく。

視界がぼやける…諦めが全身を支配しかけた…

しかし…負けちゃダメ。ここで屈したら、私は…ダメになる…

その時、脳裏に浮かんだのは義勇の静かな瞳だった。

師範が教えてくれた呼吸…

積み重ねた稽古…

ここで壊されるために刀を握ってきたわけではない。

「…っ」

ゆきは死に物狂いで残りの体力を振り絞り、男の隙を突いて突き飛ばした。

勢いで遠くへ飛ばされた日輪刀を必死に掴み取り、追いかけてくる男を背に、無我夢中で逃げ出した。

苦しい…息が苦しい…

乱れた隊服を片手で抑え、泣きながら力いっぱい走った。

ようやく見えた義勇の屋敷の門前に辿り着いた時、ゆきはその場に崩れ落ちた。

震える指先は、抜いた刀を握りしめたままだった。


常駐の隠が、門から物音がしたので覗きに出てきた。刀を持ち倒れるゆきを見つけて慌てて駆け寄った。

「ゆきさん!?大丈夫ですか?すぐに柱を呼びますからね」

「待って…言わないで…義勇さんにはこの事を言わないでください。」

隠は、困惑しながらもゆきの頼みを受け入れた


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