第83章 新しい生活
宿舎に戻ると、あさひが夕飯も食べずに帰りを待っていてくれた。
「おかえり、ゆき!遅かったから心配したよ」
あさひの屈託のない笑顔と温かな食事に、義勇との別れで強張っていた心がわずかに和んだ。
食後、風に当たろうと二人で中庭へ出ると、下卑た笑い声が聞こえてきた。
「おいおい、また柱のお気に入りのお出ましだ」
現れたのは、数人の男性隊士たちだった。
笑いながらゆきを取り囲む。
「柱たちとあんなに長く一緒にいて、一体何回寝たんだ? 剣技以外にも、さぞかし手厚い稽古を受けたんだろう?」
執拗に繰り返される下世話な言葉。あさひが顔を真っ赤にして間に割って入った。
「やめてください! 彼女にそんな失礼なこと…!」
だが、彼らはあさひを力任せに突き飛ばす。
男たちの大きな手が、逃げようとするゆきの肩や、腕を、乱暴に押さえつけた。
「嫌…離して…っ!」
抵抗すればするほど、彼らの手には力が入る。
その瞬間、脳裏にあの過去が映し出された。
かつて自分を襲った山賊たちの、汚れた手、酒臭い息遣い…。
呼吸が浅くなり、視界が歪む。恐怖で声も出せず、震えが止まらない…
「何をしている!お前達!」
その時、どこかで聞き覚えのある声が響いた。
隊士たちの動きが止まる。彼らは顔色を変え、慌ててゆきから手を離すと、直立不動でその人物に深く一礼した。
その隊士達の視線の先をゆきは見た…
「…三田、さん?」
顔を上げると、そこにはかつて共に稽古に励んだ三田の姿があった。
今は階級も上がり、隊士たちを統率する役職に就いていた。
三田は、後輩隊士達たちを追い払うと、怯えるゆきの隣に歩み寄った。
「災難だったな、ゆき…ここはまだ、荒っぽい連中が多い…気にするな」
そう言って差し出された手
かつて同じ場所で汗を流した仲間の存在に、ゆきは張り詰めていた糸が切れたように、体から力が抜けた…。
「よ、良かったぁ…三田さんが居て…。」
あさひも、ゆきの元に駆け寄った。
「三田さんとゆきは、お知り合いだったんですね?」
「あぁ…かつて共に水柱様それに霞柱様にも稽古をつけてもらっていた。」
その後懐かしい話をしこの日は三田のお陰で、落ち着いた夜を過ごせた。