第83章 新しい生活
無一郎は震えの止まらないゆきを抱きかかえるようにして、静まり返った廊下を歩いた。
早朝の隊士宿舎にはまだ人の気配はなく、誰にも見られることなくゆきに部屋を聞き連れて行った。
扉が閉まった瞬間、無一郎はゆきを壁へと追い詰め、強く抱きしめた。
「大丈夫だよ…」
熱を帯びた優しい声が鼓膜を揺らした直後、深い口づけを落とされた。
山賊の記憶に怯えていたはずの身体が、無一郎の体温に、上書きされていく。突然のことに驚き、肩を震わせるゆきだったが、無一郎の情熱的な抱擁に、次第にその胸に身を委ねていった。
唇を離した無一郎は、視線を逸らそうとするゆきの頬を両手で包み込み、じっと見つめる。
「ねえ、僕との婚約…またしてくれたら、こんな所に住まずに、ずっと一緒にいられるよ?」
その言葉は甘く、ゆきの胸を締め付けた。
再び重なる唇。今度は深く、舌を絡ませるような情熱的な口づけ。
「んっ…はっ…ん…」
ゆきの思考を麻痺させるかのように、無一郎は何度も何度も愛を注ぎ込む。
「ゆき…お願い。また僕と婚約してよ……」
吐息混じりの切ない懇願に、胸が締め付けられる。
ゆきの脳裏には、無一郎の傍で才覚を現している継子の美月の姿が浮かぶ。
美月さんが無一郎くんの側にはもう居る…あの人は、無一郎くんの事を想っている。
もう、私の戻れる場所なんてないはずなのに
そう自分に言い聞かせ、無一郎を押し返そうとする
しかし、無一郎はそれを許さない。ゆきが何を不安に思っているのか、すべてを見透かしているかのように。
「僕は、君だけを見てる…心配いらないよ。」
無一郎は愛おしそうに目を細め、甘い口づけを、何度も何度も繰り返してくる。
「む、無一郎…く…んっ…んっ」
止まることない口づけ…部屋のベッドの上にとうとうゆきを押し倒した。
「欲しくなっちゃった…」
隊服のボタンに手がかかる…ゆきはその手を握った。
「駄目…」
「なぜ?この前は素直に受け入れてくれたのに…」
「ここは鬼殺隊の宿舎…。場をわきまえて」
無一郎は、高まる気持ちを抑え、ゆきの額に口づけを落とした