第83章 新しい生活
慣れない場所のせいなのか朝早く目が覚めたゆきは、顔を洗うために水場で顔を洗っていた。
冷たい水が肌を刺し、昨夜の嫌な出来事が少しだけ遠のく気がした。
ふと、背後から無遠慮な気配を感じた瞬間、乱暴に髪を掴み上げられる。
「朝早いね〜昨夜は眠れた?柱の添い寝がなかったけど」
振り返ると、ニヤニヤと笑みを浮かべた昨日絡んできた隊士の一人が立っていた。
ゆきは、かっとなって掴まれた手を振り払おうとしながら言い返す
「そんなんじゃない!」
しかし、男はゆきの抵抗を嘲笑うかのように、空いた手で肩から背中へと、ねっとりとした手つきで撫でてきた。
「へえ、良い体してるな…柱たちが夢中になるわけだ…俺も夢中になりたいな?」
その瞬間、ゆきの脳裏に、封じ込めていた過去の忌まわしい記憶―山賊に襲われた時の恐怖が鮮明に蘇った。
「あれ?腰抜かしちゃったぁ?」
全身の血が引き、震えが止まらなくなる。その場に崩れ落ちたゆきの視界は、溢れ出した涙で歪んでいった。
その時どこからともなく冷たい風が流れてきた…
「君…死にたいのかな?」
凍てつくような、淡々とした声が響く。
ゆきはゆっくり顔をあげると、目の前には無一郎の袴が見えた。
「あ、あ…霞柱!?」
男が驚愕に目を見開いた瞬間、無一郎は表情一つ変えず、流れるような動作で刀を抜くと、男の首筋に鋭い切っ先を突きつけた。
その瞳は、男を睨みつけている
「僕のゆきに何したの?刻まれたい?それとも、今すぐ死ぬ?」
柱としての凄まじい威圧感が男を震わせる。
男は顔面蒼白になり、ガチガチと歯を鳴らしながら平謝りして、這うようにして逃げていった。
水場には、静寂と無一郎の放つ冷たい気配だけが残った。
無一郎は刀を収めると、膝をついてゆきと同じ目線に降り、そして震える彼女の肩を、優しく抱き寄せた。
「大丈夫?君が隊士宿舎に移った話を聞いて任務帰りに寄ってみたんだよ。」
ゆきは山賊の事を思い出してしまったせいで、震えが止まらなくなっていた。その様子に無一郎は気がついた
「落ち着いて…嫌なこと思い出したね…大丈夫だよ」
無一郎は優しい手つきで、背中を擦りながらトントンしてくれた…