第82章 甘い私の身体〜時透無一郎 不死川実弥 冨岡義勇【R強強】
しのぶは、静かに二人を見つめていた。
その瞳は、すべてを見通しているようで怖かった。
「ゆきさんあなた昨夜はお酒を飲んで、また酔い潰れたようですね? 」
しのぶの言葉に、ゆきはビクリと肩を揺らした。
「先ほどここに来る途中に甘露寺さんに会ったんですよ。彼女、『昨夜は冨岡さんが迎えに来てくれて、ゆきちゃん安心している様子だった。体調どうかな?』と心配していましたよ。ずいぶんと仲睦まじいことで…」
皮肉の混じったしのぶの微笑みに、ゆきはいたたまれず、顔を伏せたまま「し、失礼します…っ」と逃げるように部屋を飛び出して行った。
廊下に響く足音が遠ざかり、部屋には義勇としのぶの二人だけが残された。
「冨岡さん」
しのぶが一歩、部屋に踏み込んで来る。
先ほどまでゆきが押し付けられていた壁際へ、今度はしのぶがゆっくりと歩み寄る。
「私とお付き合いしているのでしょう? ならば…いい加減、彼女への未練を断ってください。見苦しいですよ」
「弁解の余地はない。だが、昨夜は放っておけなかっただけだ」
義勇が絞り出すように答えるが、しのぶは冷たく遮ります。
「迎えに行くのも、介抱するのも、あなたの役目ではありません。あなたは、自分の立場を理解していますか?」
しのぶの視線が、義勇の揺れる瞳を真っ向から捉えた。
「彼女と一緒に住むのを、もう辞めてください」
「…何?」
「聞こえませんでしたか? 彼女をこの屋敷から出してください。今のあなたたちは、距離が近すぎて間違いを起こしそうです。私と向き合うつもりがあるのなら、行動で示していただきたいものです」
しのぶはそれだけを言い残し、去っていった。
一人残された義勇は、壁を見つめたまま立ち尽くしていた…。
昨夜、酔ったゆきを抱いたあの柔らかい体温と、甘く自分の名を呼ぶ声…。
…あいつを、ここから出せというのか……?
甘く漂うゆきの香り…毎日一緒に居ることが当たり前になった今…胡蝶を選んだが、まだゆきを手放すことができない…。
だが、今の自分は中途半端だ…ゆきが近くに居ると触れたくなる…昨夜みたいに…理性が崩れる…
あの甘い身体がまた欲しくなる…