第82章 甘い私の身体〜時透無一郎 不死川実弥 冨岡義勇【R強強】
朝日が窓から差し込み、ゆきは重い瞼を開いた。
ズキリと響くこめかみの痛みに顔をしかめ、ぼんやりとした意識の中で昨夜の記憶を辿る。
「…甘露寺さんと、お酒を、飲んで…」
そこまでは覚えている。不死川さんが合流したような気もする…彼がここまで運んでくれたのだろうか。そう思いながら周囲を見渡した瞬間、ゆきはどきっとした。
見慣れた自分の部屋ではない。整理整頓された机、使い込まれた筆記具
「義勇さんの…部屋だ…」
飛び起きようとして、自分の格好を確かめる。隊服は乱れなく身に纏っていたが、枕元には畳まれた桜色の羽織が置かれていた
幸いにも義勇さんの姿はない。ゆきは安堵した。
間もなく、任務から戻った義勇が部屋のふすまを開けた。目覚めたゆきが、申し訳無さそうにこちらに目を向ける
「師範…昨夜は、ごめんなさい…」
ゆきは、深く頭を下げた。その瞳には、昨夜俺を翻弄した艷っぽい光は微塵も残っていない。
「不死川さんがここまで運んでくれたんですか?」
その言葉に、義勇の心臓が音を立てる。
…覚えていないのか。昨夜の出来事を…
義勇は感情を押し殺し無表情のまま、短く「違う」とだけ応えた。
ゆきが「何も覚えていない」というていで、振る舞うなら、自分もそれに合わせるしかない。
それが、しのぶとの間で揺れる卑怯な自分にできる、せめてもの誠実さだと思ったからだ。
「気にするな。…不死川ではなく、俺が連れてきただけだ」
「えっ?何で…すいませんご迷惑かけて…」
ゆきは頬を微かに染めながらも、それ以上の追及はしない。
けれど、義勇と視線が合うたびに、何かを思い出しそうになる…昨夜…何か私はしでかしたの?
「部屋に戻りますね…」
思わず義勇は、部屋を去ろうとするゆきの肩を掴み制止した。
「えっ!?」
「俺のことが大嫌いか?」
何で…今そんな事を聞いてくるの?
「…はい。でも師範としては尊敬しているし好きです」
「昨夜は、師範としての俺に甘えたのか?」
何?昨夜…私は義勇さんに甘えたの…覚えていない…
「ごめんなさい…覚えてないんです。もし甘えたのならそれは、酔っていたからただそれだけです…本当にごめんなさい…」