第82章 甘い私の身体〜時透無一郎 不死川実弥 冨岡義勇【R強強】
屋敷に着き、義勇は迷った末に彼女を自室へと連れ込んだ。
背中の温もりを下ろすのが惜しいほどだったが、桜色の羽織を脱がせ、慎重に布団へ寝かせる。
何を……期待している、俺は
自分も羽織を脱ぎ、寝息を立てるゆきをじっと見つめる。だが、先程まであれほど求めてきた彼女は、今は静かに眠るばかりだ。
「抱っこは、いいのか?」
ぽつりと漏れた独り言。応えのない寂しさに肩を落としたその時、頬に冷たい指先が触れた。
「ぎゆう……だっこ」
ハッとして見下ろせば、潤んだ瞳が熱っぽく俺を捉えていた。
その視線に耐えきれず、俺は衝動のままに覆いかぶさり、お前を力強く抱きしめた。
「ゆき……」
首筋に顔を埋め、柔らかな体温を確かめる。だが、ゆきは残酷な問いを投げかけてきた。
「ぎゆう…今、したい? 私が、欲しい…?」
戸惑いながらも俺は…即答していた
「あぁ、欲しい。狂うほどに」
震える声で告げ、ゆっくりと手首を抑え込んだ。
しかし、追い打ちをかけるようにゆきの唇が動いた。
「ねえ…しのぶさんと、私…どっちが、気持ちいいの…?」
義勇の思考が真っ白になる…。
答えに困り、唇を噛み締めて黙ってしまった。
俺は……なんて言えば…
苦渋の決断を下そうとしたその瞬間、腕の中の力がふっと抜けた。
返事を待たずして、酒に酔っていることもあってゆきは再び深い眠りへと落ちてしまった。
「ゆき?」
呼びかけても、規則正しい寝息が返ってくるだけ…。
義勇は力なく笑い、その額にそっと自分の額を合わせた。
答えられなかった卑怯な自分への嫌悪と、やるせない愛おしさが混ざり合う…。
「すまない。お前にこんな事言わせて…」
義勇は重なるのを止め、横にゆっくりと身を倒しゆきを抱き寄せた。
明日の朝、ゆきはきっと今夜の事は忘れているだろう。
酔ったらいつもこうだ…俺に甘え呼び捨てにする。
暗い静寂の中で、義勇は寝息を立てるゆきを、そっと抱き寄せた。
「…お前以外で、果てたことなどないというのに」
その独り言は、ゆきに届くこともなく夜の闇に溶けていく。