第82章 甘い私の身体〜時透無一郎 不死川実弥 冨岡義勇【R強強】
ゆきが、屋敷にたどり着くと門の前には、義勇が立っていた。
「どこに行っていた、こんな時間まで」
低く響くその声に、ゆきは逃げ隠れすることをやめた。
無一郎の体温が残る肌が、夜風にさらされて痛いほど熱い。
ゆきは震える唇を噛み締め、真っ直ぐに義勇を見据えた。
「無一郎くんのところにいました」
その瞬間、義勇の瞳がわずかに揺れ、険しく細められた。
「何のために」
「何のために……求められたから、そこにいました。ただ、それだけです」
突き放すようなその言葉に、義勇は一歩、ゆきとの距離を詰める。
義勇の目は、今までに見たことのないような困惑と、ゆきが変わってしまった不安におしつぶされそうに揺れていた。
「…意味が分からない。取り敢えず、このような勝手な行動は…」
義勇の言葉にかぶせてゆきはせきを切ったように叫んだ
「冷たくしたり、無視したり、突き放したり……。そうかと思えば、急に優しくして私を振り回す。義勇さんのそういうところが、もう耐えられないの!」
ゆきの叫びは、夜空に響いた。
零れ落ちた涙が、美月に叩かれた頬を熱く濡らす。
「ゆき……?」
義勇が戸惑いながら、指先を彼女の頬へ伸ばそうとしたとき。
ゆきは激しくその手を振り払った。
「やめて! 触らないで! もう構わないで……! 義勇さんなんて、大嫌い……っ!」
拒絶の言葉を投げつけ、ゆきは心配そうな義勇の視線から逃げるように、自室へと駆け込んだ。
一人残された義勇は、空を切った自分の手を見つめた。
ゆきの肌の熱と、拒絶の冷たさ。
「……嫌い、か」
部屋に飛び込んだゆきは、布団に顔を伏せて声を殺して泣き続けた。
義勇は、ゆきの隣の部屋でその泣き声を聞きながら胸が締め付けられる。
しのぶを選んだ事でこんなにもゆきを、追い詰めるとは思っていなかった。
だが、それはすなわち…俺の事がお前は好きだったのか…?
そう理解すると、今の状況が腑に落ちる…。
どうなんだ…ゆき
だからあの夜俺に甘えて好きと言ったのか?それが本心なのか?
義勇は、ゆきの部屋の壁に手を当てた…