第82章 甘い私の身体〜時透無一郎 不死川実弥 冨岡義勇【R強強】
ゆきは、おもむろに起き上がり無一郎の腕の中から逃れた。
「無一郎くん、私…そろそろ帰らないと。任務の帰りにそのまま来たから…」
急に我に返ったかの様に慌てふためく君…
震える声で告げ、ゆきは乱れた着衣を整えようと指を動かす。しかし、その背中に無一郎の冷たい視線がささる。
「何? 冨岡さんが心配するから?急いで帰るの?」
「違う、そういう意味じゃ…っ」
逃げるように部屋を出ようとしたゆきの腕を、無一郎の冷えた指先が強く掴む。無一郎は追い詰めるような距離で、最後の一線を確かめるように問いかけた。
「今日、僕に体を許したのは…婚約をまたしてくれるってことでいいよね?」
ゆきの動きが止まる。心臓が痛いほど脈打ち、喉の奥が熱い。
ゆきはゆっくりと振り返り、泣き出しそうな、切ない表情を向けた。
「私は…体を求められたら、これからは答えようって決めたの。だから今日は、無一郎くんが求めてきたから答えただけ…」
そう言い捨てて、ゆきは縋る手を振り切り、逃げるように廊下へ飛び出した。
しかし、そこで待っていたのは、すべてを察し、怒りに身を焦がす美月の姿だった。
泣き腫らした目で立ち尽くしていた美月は、ゆきの姿を認めるなり、凄まじい勢いでその頬を叩いた。
パンッ!!
乾いた音が廊下に響き渡る。
「汚らわしい。どの男の人にも良い顔をして! 快楽に溺れる汚い女よ!気持ち悪い!」
「やめろ!」
背後から飛び出した無一郎が、激昂して美月の腕を抑えつける。
だが、ゆきは振り返らなかった。頬の痛みよりも、自分の馬鹿げた決意が招いた惨めさに涙が溢れ、止まらない。
「ごめんなさい……こうでもしないと、心が壊れそうなの…」
弱々しい声だけを残し、ゆきは屋敷を飛び出した。
「待って!ゆき!僕は君が一番だよ!忘れないで!ゆき!」
無一郎くんの優しい声が聞こえた…こんな私をそんな風に想ってくれてありがとう…
涙を堪えながら、義勇がいる屋敷に向かい歩き出した。
平常を装い屋敷に戻らないと…
ゆきの足は、重くなる…だけど前に進んだ。