第81章 見せつけられる愛
夜も明け宿も騒がしく朝の食事の準備などに忙しくなっていた。
「離してくれ…胡蝶」
義勇が身を起こそうとするたび、しのぶの腕がそれを優しく、甘えるように引き止める。
「いいではありませんか。任務でもないのです。…それとも、あの子のことがそんなに気がかりですか?」
しのぶの唇が、義勇の首筋に甘く、触れる。
彼女の瞳はすべてを見透かしているようで、その微笑みは美しく、そして切ない。
「あの子なら、もう先に屋敷へ戻っていますよ。子供ではないのですから。…今は、私だけを見てください、義勇さん」
「…」
「それより…口づけを…」
せがまれるままに重ねる口づけ。その熱に溺れながらも、義勇の心は昨夜の「もう一つの体温」雪のように儚く、けれど確かに自分を求めていたゆきの感触をどうしても思い出していた。
ようやく解放され、義勇が乱れた隊服を整えて屋敷へ駆け戻った頃には、陽は高く昇りきっていた。
「ゆきはいるか?」
静まり返った屋敷に、義勇の切羽詰まった声が響く。しかし、返事がない。
常駐している隠が、義勇の声に気付き中から現れた
「柱おかえりなさいませ。ゆき様は今朝から一度も戻られておりません」
義勇の頭の中が真っ白に染まった…。
ーーー
その頃ゆきは、無一郎の屋敷にいた。美月が、不機嫌そうにお茶を出してくれる。
「美月ありがとう。下がって」
無一郎は、美月を部屋から出しゆきと二人きりになった。
「昨夜は任務だったの?」
「…うん」
「そっか…」
それだけ無一郎は、聞いて側で折り紙を折り始めた。ゆきは、座ってその様子をぼんやり眺める。
「目が眠たそうだよ?昨日任務で疲れたんじゃない?寝ていいよ」
無一郎は、ゆきを見てニコッと微笑みかけ両手を広げた。
「おいで、抱っこしてあげる。」
ゆきは、言われるがままゆっくりと無一郎の腕の中に身を委ねた。
「今日は素直だね」
無一郎は、愛おしそうにゆきを抱きしめた。
温かい…無一郎くんの腕の中は…何だか安心する
自分に心許しているように見えるゆきが愛おしくて、無一郎は、ゆきの顎を持ち自分に顔を向かせた。
「唇食べても良い?」