第81章 見せつけられる愛
腕をつかむ義勇を冷ややかな目で見ているしのぶにゆきは気づいた。
仲睦まじい二人を邪魔したくないという一心で、ゆきは「廊下で寝ますから」と震える声で訴えた。
しかし、ゆきの細い手首を掴む義勇の手は、緩むことはなかった。
「…三人で、寝床を三つ並べればいい」
「で、でも私が居てはお邪魔です…」
「お前が居なければ鬼が出る。また別日に策を練り直し任務を遂行する。」
淡々としているが、有無を言わせぬ義勇の言葉。ゆきの胸には、鋭い痛みが走った。
それはそうだけど…元々は私がいなければ、二人で任務をこなすつもりだったのに…。私が義勇さんに喰って掛かったからは連れてきたの?
そんなゆきの葛藤を見透かしたように、しのぶが「あらあら、名案ですね」と、微笑を浮かべて快諾した。
結局、真ん中にしのぶが入り、その両脇を義勇とゆきが固める形で横たわることになった。
暗闇の中、ゆきは隣から聞こえる衣が擦れる音に耳を澄ませた。
義勇としのぶの距離が、近ずくのを感じ、胸が締め付けられる。
ゆきがうとうとしてきたその時、衣が擦れる音と共に、しのぶの密やかな囁きが聞こえ眠気が覚めた。
「冨岡さんの、お布団に入ってもいいですか?」
その甘い問いかけに、ゆきは布団を頭まで被り、強く耳を塞いだ。
視界を閉ざしても、隣り合う二人の気配がわかる…
どうして、またこんな…
溢れそうになる涙を堪えた瞬間、脳裏に鮮明な記憶が蘇った。
かつて無一郎が自分を抱こうとしたあの夜、義勇は頑なに自分の側を離れず、同じ部屋で夜を明かした。(※第41章狂った夜〜後編参照)
あの時、二人の仲を裂く「邪魔者」の立場にいたのは義勇の方だった。
今は立場が逆転し、自分こそが二人の邪魔をしている。
話し声がする…しのぶさんは、義勇さんの隣に入ったような気配がした…。
部屋から出たい…出たいよ…涙が溢れる…義勇さんはあの夜自分が受けた嫌な思いを私に、やり返したかったのかな?
そんな事を考えていたゆきだが、暫くして疲れもあったのか、いつの間にか眠っていた。
皆が寝静まった静かな部屋に畳を歩く音がする…