第80章 決別
震えているゆきに、黙って先ほど脱がせた寝間着を肩からかけた。
体には何も跡がなかった…昨夜は何もなかったと確信した義勇は、その事実に安堵した。
だが、恐怖と屈辱に顔を歪めるゆきの表情を見て、己のしたことの浅ましさにようやく気付く…
「…すまない、俺は…」
ゆきは、震える手で寝間着を着ようとするがなかなか上手くいかない…。
畳の上に落ちた腰紐を、義勇は拾い上げもたもたしてなかなか着ることが出来ないゆきに、義勇が寝間着を着せてあげた。
ますます意味のわからない行動にゆきは、困惑するしかなかった。
「あ、あの…何でこんな事…?」
帯紐を結び終えた義勇は、すっと立ち上がった。
「確認したかっただけだ」
「何をですか?」
「時透の跡がないかだ…」
その言葉を、聞きゆきは呆れた表情を義勇に向ける
「そんなの義勇さんに、関係ないじゃないですか?私が無一郎くんと何をしようが義勇さんに関係ない…」
潤んだ瞳で、睨みつけゆきは出て行った。
取り残された義勇の手のひらには、ゆきの体温と、絶望的なほど甘い残り香だけが虚しく残った。
俺は…何をしたいんだ…ゆきを諦めたのに…何を嫉妬に狂っているんだ…
ゆきは、足が縺れそうになりながら部屋に戻ろうとしたがその前に、義勇に着せられた寝間着をもう一度きちんと整えた。
無一郎に悟られぬように…
何事も無かったかのように…