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鬼滅~甘い恋の話~時透無一郎、冨岡義勇★R18

第80章 決別


「どこに行っていたの? 急にいなくなるから、心配したよ」

​部屋に戻ったゆきを待っていたのは、まだ眠気の残る、無一郎の心配そうな瞳だった。

彼の心配そうな表情に、胸の奥がチクリと痛む。義勇に乱暴に掴まれた手首の熱が、まだ肌に残っている。

それを悟られぬよう、ゆきは震える指先で寝間着の合わせを強く握りしめた。

​「ごめんなさい。少し喉が渇いて、台所にお水をもらいに行っていたの」

​不自然なほど震えた声。それが「義勇に追い詰められ、泣きそうになったせい」だとは、死んでも言えなかった。

無一郎は一瞬、不思議にゆきの乱れた髪を見つめたが、深くは追及しなかった。

「僕そろそろ屋敷に戻るね…また来るから」

無一郎は、そう言い残し自身の屋敷へと帰って行った。


​独り取り残された部屋で、ゆきは深く息を吐き出す。

だが、立ち止まっている暇はなかった。そろそろ稽古が始まる時間だった…。

​道場の重い戸を開けると、既に義勇が独り、立ち尽くしていた。

    「遅れて、すみません」

その声に、義勇の肩が微かに揺れる。だが、彼は振り返ることも、今朝の出来事を謝罪することもしない。

ただ、冷静で無機質な声で「始めよう」とだけ言った。

​しかし、いざ稽古が始まれば、義勇の異変は明らかだった。

いつもなら絶対に崩れない彼の剣が、驚くほど危うい。

視線はゆきを捉えているようで、目が合う度に泳ぐ…。

       「…っ!」

一瞬の隙。ゆきが踏み込むと、竹刀は容易く義勇の胴を打った。普段ならあり得ない「一本」だった。

​       「それまでだ」

​義勇は打たれた箇所を見ることもなく、告げた。

「今夜の任務だが、胡蝶と二人で十分だと判断した。お前は…来ても来なくても、どちらでもいい。好きにしろ」

​突き放すような言葉に、ゆきは反論した。

「そんなの、師範が決めてください!なぜ私に委ねるんですか?今朝の師範も意味が分からなかったし…もう私を混乱させないでよ!義勇さんなんか大嫌い!」

ゆきは、手に持っていた竹刀を義勇の背中にぶつけて道場から走り去った。

あまりの出来事に、義勇の思考が止まる…。

ぶつけられた背中は痛くなく、義勇の心だけが痛かった…。


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