第80章 決別
隣室から漏れ聞こえていた微かな物音も、いつの間にか途絶えていた。
義勇はただ、暗闇の中で一点を見つめ、濡れた髪が冷え切るのも忘れて立ち尽くしていた。
壁一枚の向こう側で、ゆきが俺以外の男に抱かれている。
その残酷な想像は、義勇の心を苦しめた。
結局、一睡もできぬまま夜が明けていく。
寝不足で重い頭は、正常な判断力を奪い去っていた。
朝方、廊下で小さくふすまが開く音がした。
覗くと、寝間着姿のゆきが、力なく縁側の方へ歩いていく背中が見えた。
その姿を目にした瞬間、我慢していた感情が溢れ出てしまった。
昨夜、時透は彼女に触れたのだろうか。あの白い肌に、自分以外の跡が刻まれてしまったのだろうか。確認しなければ狂ってしまいそうだ…嫌だ…
そんな切迫した衝動に突き動かされ、義勇はゆきの元へ駆け寄った。
「っ、義勇、さん…?」
驚きに目を見開くゆきの手首を荒々しく掴み、義勇は近くの空き部屋へと彼女を引きずり込んだ。
ふすまを乱暴に閉め、困惑するゆきを壁に追い詰めた。
「お前の師範として、確認させてもらう」
自分でも驚くほど冷たい声…。
逃げようとするゆきの肩を抑え、義勇は迷いなくその寝間着の合わせを左右に開いた。
はだけた衣の隙間から、艶やかな白い肌に、二つの豊かな膨らみが露わになる。
義勇の視線が、吸い寄せられるようにその首筋から胸元へと走る。…そこには、紅い印も、誰かが触れた名残も、何一つ存在しなかった。
しかし義勇の確認は、まだ終わらない…
ゆきの身体の向きを変え壁に押し付けた。ゆきの柔らかな胸が冷たい壁へ押し付けられる…。
そのまま帯を解かれ寝間着を、後ろから引き抜かれ全部脱がされた…。
背中や腰にも跡がないか、確認した…
真っ白な綺麗な肌のままだった。
「ぎ、義勇さんっ…い、痛い…」
あまりに、気が立ち義勇は目一杯の力で一糸纏わぬ姿のゆきを壁に押し付けてしまっていた。
我に返り義勇が、力を緩めるとゆきはその場にしゃがみ込み丸くなり体を抱え込んで下を見た。
「な、何するんですか…?」
ゆきは、理由がわからずにカタカタ震えていた。