第80章 決別
そして二人は、刀鍛冶の里を後にし義勇の屋敷に戻って来た。
翌日、産屋敷邸で開かれた柱合会議。
そこで開かれた会議は、ゆきの心をまた乱していく…。
「私、冨岡義勇は、胡蝶しのぶ殿と真剣に交際していることをここに報告する」
義勇の淡々とした声が、静まり返った庭に響く。
「…はァ? 冨岡、テメェ正気かァ?」
不死川の荒い声が響く、無一郎も驚きを隠せない。
騒然とする柱たちの中心で、義勇の隣に立つしのぶは、いつもの微笑みで寄り添っていた。
ゆきは、会議の場の隅、中庭の木陰でそのすべてを聞いていた。
「私的には触れない」という昨夜の言葉の意味
これ以上ないほど残酷な形で今理解した。
義勇は完全に、自分を継子としてだけ見ようと決心したんだと…
虚ろな瞳で中庭の石畳を見つめ、ただ立ち尽くすゆき
その姿は、あまりにも危うく、今にも消えてしまいそうなほど儚い。
「ゆき」
その痛々しさに耐えかね、無一郎が思わず歩み寄ろうとした。しかし、その袖を強く引き留める手があった。
「行かないで、無一郎様」
彼の継子である美月が、泣きそうな顔で首を横に振る。
「無一郎様!もうゆきさんに構うのを辞めると私に仰ったじゃないですか!?」
そう…また無一郎もついこの間美月が、自分を想うが故にゆきに、つらく当たっていたこと、自分がゆきの身代わりに都合よく扱い傷付けていた事に気付いたところだった。
だから美月を大事にしようと思った矢先でもあったので
ゆきの心細気な背中を無一郎は、じっと見つめるしか出来なかった。
そんなゆきを眺めていた時、義勇がゆきが待つ木陰へ歩み寄るのが見えた。
何やら話した後ゆきは、一人で産屋敷邸を出て行った。
一人?いつも何があっても冨岡さんはゆきと行動を共にしていたのに…もう突き放すの?胡蝶さんと交際を、始めたから?あんなに、危ないって過保護だったくせに
無一郎は、袖を掴む美月の手をゆっくりはずした。
「ごめん…先に屋敷に帰って」
それだけ言ってゆきを走って追いかけた。
美月は、その後ろ姿を見つめた…
なんで…無一郎様行っちゃうの?私の気持ちを、わかってくれたのではないのですか?