第76章 奪い合い〜冨岡義勇 時透無一郎 不死川実弥【R】
屋敷に帰ると、義勇は「書き物がある」とだけ言い残し、自室に籠もってしまった。
ゆきは部屋で一人、疼く傷を抑えながら不安に駆られていた。
義勇さんが、段々自分に対して大胆になってきているような気がする…
けれど…継子としては、認めてもらえていない…
足手まといに思われているのは確かだと思う…
美月さんに、かける言葉、信頼がすごいし…
私にはちっともない…失敗や迷惑かけて怒られるだけ…
夕食時、隠に呼ばれて向かうと、そこには豪華な食事が用意されていた。
部屋に呼びに来た隠に、怪我をした私が早く良くなるようにご馳走にしてくれと柱に頼まれたと教えてくれた。
義勇は昨日の激しさが嘘のように静かに振る舞っていたが…また突拍子のない提案をしてきた。
「手が不自由だろう。濡らしてはいけない。風呂は俺が手伝う」
唐突な提案にゆきは顔を赤らめて断るが、義勇は一歩も引かなかった。
結局、大きな布で体を巻くという条件で、二人は浴室へと向かった。
湯気に霞む室内。義勇は驚くほど丁寧に、ゆきの手を濡らさないよう細心の注意を払って髪を洗ってくれていた。
だが、その指先が肌に触れるたび、ゆきの体は強張った。
「そんなに俺が、信用できないか」
義勇の声が低く響く。彼は背後から、布越しにゆきの腰を抱き寄せた。水を含んだ布が肌に張り付き、体温がダイレクトに伝わる。
「洗いにくいもう少しこっちに来い」
義勇は、丁寧に髪を洗い終えた。
「身体も俺が洗う。座れ」
義勇の強引な言葉に必死に抵抗し、狭い浴室で小競り合いになる。
その拍子に、義勇の襟元が大きくはだけた。
そこには、昨夜自分が仕方なく付けた跡が見えた…。
しのぶの痕を塗り潰すように付けさせられた記憶が鮮明に蘇り、ゆきが怯んだ一瞬を義勇は逃さなかった。
「大人しくなったな」
義勇は背後からゆきを抱き込み、抗う間もなく濡れた手拭いで肌をなぞり始めた。
「義勇さん…浴衣濡れちゃってるからもういいですよ!」
「構わない。風邪を引くのはお前の方だ」
義勇は取り合わず、震える肩を大きな掌で固定した。
手拭いが肌を滑るたび、布越しの熱が伝わってくる。
「終わりだ」
手際よく全身を拭い、逃がさぬよう強く抱き締めた。