第76章 奪い合い〜冨岡義勇 時透無一郎 不死川実弥【R】
「嫌だと言っても、もう離さない」
義勇の声は低く、少し悲しげだった…。
はだけていた隊服を音も立てずに床へ落とすと、義勇は震えるゆきをその逞しい腕の中に閉じ込めた。
肌から伝わる熱が、薬品のせいか、それとも抑えきれない興奮のせいか判別がつかない。
「俺を見てくれ、ゆき。…頼む」
拒絶を恐れるように強く抱きしめ、義勇はゆきの耳元で熱い吐息を漏らす。
「俺は、お前だけが好きなんだ。胡蝶に何をされたのか、本当に記憶がない。気づいた時にはこの忌々しい跡がついていた…。俺の意志じゃない。俺の心にあるのは、お前だけだ」
義勇さん…何を言うの…辞めて…こんなの駄目だよ…
義勇の必死な訴えに、ゆきの肩が小さく揺れた…。
義勇はゆきの首筋に顔を埋め、声を絞り出した。
「お願いだ、ゆき。この跡の上から…お前の跡をつけてくれ。上書きしてほしいんだ。俺の身体も心も、お前だけのものだと…証明させてくれ」
「ちょっ…義勇さん!?辞めてください!私達何度も言いますが、師範と継子の関係ですよ!跡をつけるだなんて…おかしいです。」
義勇は、少し身を起こしゆきの唇が、胸板に当たるようにして抱きしめた。
「…んっ!?」
「そのまま…俺に跡を付けてくれ…お前の跡が欲しい…」
唇が、硬い胸板に触れる…ゆきはそのまま上目遣いで義勇の顔を見た。
その顔が…俺をもっと熱くする…そそられる…。義勇は、ゆきの髪を優しく撫でてから耳の後ろをゆっくり撫でる…
「そのまま…軽く吸ってみろ」その言葉にゆきの顔が赤く染まる…。
唇が、俺の肌に触れたままお前は、嫌だと頭を横に振った。
「そうか。嫌なことをして、すまなかった」
義勇が、力なく腕を解こうとした瞬間、その孤独な背中に耐えかねたゆきが自分から彼の肌に唇を寄せた。
「一箇所だけ、服に隠れて見えない場所になら。いいですよ」
鎖骨の下、硬い胸板を深く吸い上げると、義勇は甘い呻きを上げ、ゆきの背を強く抱きしめ返した。ゆきは義勇を突き放すと、真っ赤な顔で布団に潜り込んだ。
「もう出て行ってください!」
独り残された部屋で、ゆきは激しく波打つ鼓動を必死に抑え込んだ…。