第76章 奪い合い〜冨岡義勇 時透無一郎 不死川実弥【R】
「恋人じゃない」という拒絶は、義勇の心に潜む独占欲に火をつけるには十分すぎた。
「なら、わからせてやる…。お前が誰のものか」
熱でぼんやりとするゆきの意識を置き去りに、義勇は彼女をベッドへと押し倒した。
炎症を起こした手の痛みと、高熱による倦怠感で抵抗する力も残っていない…。
「やめっ…義勇さん、苦しい…」
熱い吐息が首筋に降り注ぎ、義勇の大きな手がゆきの浴衣に掛かったその時―。
「テメェ、何さらしてやがる、冨岡ァ!!」
凄まじい怒号と共に、部屋の扉が開いた。踏み込んできたのは、血走った眼に怒りを宿した不死川だった。
不死川は一瞬で間を詰めると、ゆきに覆い被さる義勇の髪をを掴み、力任せに引き剥がした。
「熱で死にかけてる女を組み敷いて、何が師範だ、あァ!? 吐き気がするぜ」
すぐに、不死川はゆきに走り寄り声をかけた「大丈夫か?ゆっくり休んだ方がいい、俺ァ側にいてやる」
そんな不死川の様子を見て義勇は、鼻で笑った。
「なんだてめェ?」
「お前の方がだろ、熱に魘されているゆきをどうにかしようとしていたのは?」
ゆきが、その発言に驚き抱きかかえてくれている不死川を見た…
「な、何言ってんだァ?」
「お前自身が一番覚えているだろ?」
「適当な事を、言うなァ!早く出ていけ」
義勇は、乱れた髪も直さず不死川の胸ぐらを掴みゆきから引き離した。
「大事な俺のゆきに容易く触るな!」
「はァ!?ざけんなてめェ」
二人はその場で、取っ組み合いを始めた…。ゆきは、熱のせいもあり二人を遠のく意識の中で眺める事しか出来なかった。
騒ぎを聞きつけたしのぶが現れ、その場を制した。義勇を想う彼女は、無自覚に男を惑わすゆきが疎ましくてならない…
「殴られてその怪我…見苦しいですよ、冨岡さん」
しのぶは負傷した義勇を強引に連行する。そしてあえて不死川に看病を任せた。
「不死川さんゆきさんお願いしますね。」
「胡蝶離せ!不死川とゆきを二人きりにさせたくない!」
しのぶは、溜め息をつき胸ポケットから小さな布を取り出し義勇の鼻と口を軽く覆った。
「な、な…んだ?な…に…を…」
義勇は、しのぶに崩れ落ちた…。