第86章 無一郎と美月の秘密【R18】
冷たい水で顔を洗い、無理やり心に蓋をしたゆきは、部屋へと戻った。
視界の端に焼き付いた美月の部屋から出てきた、着崩れた寝間着姿の無一郎…という光景を、必死に記憶の奥底へ押し込める…。
着替えようと手に取った隊服を見つめ、これ以上惨めにならないよう、心を無にして身支度を整えようとしたその時だった。
「ゆき…もう支度してるの? 早くない?」
遠慮なく開いたふすまの先に、眠そうに目を擦る無一郎が立っていた。
さっきまで美月の部屋にいたはずの無一郎が、何食わぬ顔で自分を見つめている…。
その無邪気ささえ、今のゆきには苦しかった。
「あ、あの…今日は、朝食は取らずに出ようと思って…」
震える声を抑え、顔を伏せたまま答えた。
しかし、無一郎はゆきの変化を読み取ることなく部屋へ踏み込み、有無を言わさずゆきを抱き上げた。
そのまま自身の布団へと押し倒した。
「な、何するの…っ!?」
「昨日、ゆきにあまり触れてないから。今無性に触れたいなって…それと冨岡さんのところへ行く前に、跡をつけておこうと思って」
落ちついた声…。
無一郎の手がゆきの寝間着を容赦なく解き、白い首筋に吸い付いた。
数分前まで美月さんと過ごしていたはずのその唇が、今は自分の肌を汚していく。
やだ…美月さんと一緒にいたくせに、どうして…
「やめて、放して…っ!」
「痣に響くから、大人しくして」
無一郎はゆきの顎を固定し、強引に唇を重ねようとした。
さっきまで、無一郎くんは美月さんと一緒に居たんじゃないの?なのに、何故私にこんな…
「イヤッ!!」
叫びと共に部屋を飛び出した、乱れた着衣も、解けた帯も構わずに
「ちょっ!? ゆき!?」
背後で困惑する無一郎の声が響く。ふと畳に目を落とせば、ゆきの帯が転がっていた。
「あんな格好のままで…! もうすぐ隠たちも起きてくるのに…!」
無一郎は、焦ってゆきの後を追った。