第75章 水柱と継子 霞柱と継子〜冨岡義勇 時透無一郎 不死川実弥
藤の花の家に戻ると、そこには既に無一郎と美月が帰還していた。
行灯の淡い光の下、今夜の配置を決めるべく四人が囲炉裏を囲んでいるが、その空気は今朝の余波を引きずったまま張り詰めていた…。
「村外れで鬼の目撃情報が数件。それも下弦の伍、あるいはそれに類する強さの個体が複数体潜んでいる可能性がある。…ここは俺と時透、二人の柱だけで向かうのが妥当だ」
義勇が冷静な口調で切り出した。
これ以上、ゆきを危険に晒したくない、その独占欲にも似た守りたい気持ちは、隣を歩いてもらえなかった寂しさでより一層強くなっていた。
しかし、それを遮ったのは美月の言葉だった。
「お言葉ですが、水柱様。相手が下弦程度であれば、継子である私たちが向かうべきです。実戦を積む好機を奪わないでいただきたいです。それとも、柱二人がかりでないと倒せないほど、お力に自信がないのですか?」
挑発的な美月の視線は、義勇を通り越してゆきへと向けられていた。無一郎は美月の言葉に異を唱える様子もなく、ただ黙って話しを聞いていた。
「実力の問題ではない。万が一の事態を想定している」
「いいえ。私とゆきさんで十分です。ねえ、あなたもそう思うでしょう?」
美月に同意を求められ、ゆきが言葉に詰まる様子を見て、義勇の胸は締め付けられる。
一人で行かせたくない。また同じ過ちは犯したくない。もしゆきに何かあったら俺は…潰れてしまう。
「認められない。ゆきを一人で行かせるわけにはいかない。」
義勇のその言葉は、もはや任務の差配ではなく、自身の我儘のようにも聞こえた。
「なら…僕とゆきで行こうかな?それなら冨岡さんは心配いらないでしょ?」
無一郎が淡々と告げ、さらに美月へ視線を移す。「美月は腕を磨きたいなら、一度冨岡さんに付くといい。勉強になるよ」
二手に分かれる提案に義勇は絶句する。復縁を狙う元婚約者の無一郎…。その真意を悟り、二人で行かせる事に不安になった。
無一郎は動揺する義勇の目を真っ直ぐ見たまま、ゆきの手を引いた。
「安心して。僕が君の隣にいるのが一番安全だから。鬼が出たら思いっきり戦っていいよ。僕が援護するから」
ゆきは、義勇の顔を見るが…「行くよ」と無一郎に手を引かれ行ってしまった。