第75章 水柱と継子 霞柱と継子〜冨岡義勇 時透無一郎 不死川実弥
「何って。見ての通り、ゆきが困っていたから助けてあげただけだよ。冨岡さんこそ、そんなに怒らなくてもいいじゃないか。」
無一郎は箸を置き、平然と言い放つ。少し挑発的にも見えた。
「やり方が常軌を逸している。…公衆の面前で、慎みのない真似を」
「慎み? 婚約者だった僕が、ゆきの口にあるものを受け取って何が悪いの? むしろ、部外者の冨岡さんが親しげに背中に触れている方が、よっぽど気色が悪いけど」
部屋の中の空気が一気に悪くなるのが分かる…。その時勢い良く美月が箸を置いた。
「ご馳走様です。無一郎様、街への聞き込みに行ってまいります。」
美月は、不貞腐れた表情で出て行った。無一郎は、美月の様子が気になっているようだった。
「時透気になるなら美月と、共に街の聞き込みに行ってきたらどうだ?」
何も答えず、無一郎も美月の後に続き部屋を出て行った。
相変わらず美月は、ゆきと同じ香りの香油をつけている。
私と同じ香りが、微かに部屋のふすま付近に香っていた…。
無一郎が、去ったふすまをじっとゆきは、見つめている…。
「なんだ?気になるのか?」
義勇が、ゆきの両肩を持ち、ふすまから自分の方へ向かせた。
「べ、別に…気には…ならない…です。」
歯切れの悪い返事…お前の気持ちがどんどん時透に向いていくのを肌で感じてしまう…。
嫌だ…
昨夜は幸せだったのに
すぐに、時透に塗り替えられる…。
「消毒したい。」
「消毒?何をですか?」
義勇が、親指でゆきの唇を撫でる…。
「義勇さん?」
「先程、時透が触れたここを綺麗にしたい。」
近づいてくる義勇、ゆきはとっさに避けた。そして立ち上がり触れられないように、ふすまの方へ移動した。
「わ、私達も聞き込みに出ないと!」
ゆきは、ふすまを開け廊下にでてしまった。
義勇は、やりきれない気持ちのままゆきの後を追うように部屋から出た。
街に出ても、ゆきは俺の近くを歩いてはくれなかった。手を伸ばしても届かぬ絶妙な距離で歩く。
俺を、警戒しているように感じて寂しかった。
聞き込みの成果で村外れの場所で、鬼らしきものの目撃情報を多く獲れた。
ひとまず藤の家に戻ると無一郎達は、すでに戻っていた。