第86章 無一郎と美月の秘密【R18】
乱れた寝間着のまま、なりふり構わず廊下を駆けるゆき
角の向こうから隠たちの話し声が聞こえてきたその時、背後から伸びた手に強引に空き部屋へと引き込まれた。
「ちょっと、どうしちゃったのさ。ダメだよ、そんな格好で廊下に出ちゃ…」
背後から包み込むように抱きしめてきたのは、追ってきた無一郎だった。
無一郎は怯えるゆきの反応を先程の行為への拒絶と履き違えたのか、耳元で低く囁く…。
「嫌だった? 首に跡をつけられるの」
そう言いながら首筋に、優しく口づけを落とした。
触れる唇の温度さえ、今のゆきには耐えがたい…。
「昨日…任務から、いつ帰ってきたの?」
震える声の問いに、無一郎の表情が微かに強張る。
しかし、無一郎は表情をすっと変え答えた。
「明け方だよ。君はぐっすり眠っていたから、起こさないようにしてたんだ」
嘘つき……
胸の奥で、叫んだ…。
朝まで美月の部屋にいたことも、そもそも任務など嘘だったのではないかという疑念も、すべてを飲み込んでゆきは顔を背けた。
「は、早く…用意して行かないと…」
無一郎の腕からすり抜けようともがくが、離さない。
代わりに、解けたままのゆきの寝間着を丁寧に合わせ、腰に帯を回した。
「待って 帯、結んであげるから」
皮肉なほど優しく、手慣れた動作で整えられていく着衣
その指先が触れるたび、ゆきの心は冷たく凍りついていく…。
「…ありがとう」
「痛みはどう? まだ痛むなら銀子を飛ばして、冨岡さんに今日の稽古は休むって連絡するけど」
本当に心配してくれているの…?私の事を…もう、わからないよ…
「大丈夫! 行く!」
差し伸べられようとした手をすり抜け、ゆきは振り返ることなく、その場を飛び出していた。
「ゆき!?」
無一郎は、何か嫌な予感を感じていた…。
ゆきの様子があきらかにおかしい…。
あきらかに僕を避けている…
もしかして…何か勘付かれている?
僕と美月の事を…