第75章 水柱と継子 霞柱と継子〜冨岡義勇 時透無一郎 不死川実弥
翌朝義勇とゆきは、朝食が準備されている部屋に向かった。
膳を囲む空気は、どこか張り詰めていて気まずいものだった…。
「遅かったね、二人とも」
無一郎が淡々と口を開く
ゆきは昨夜の出来事を思い出し、顔が赤くなるのを隠すように俯いた。義勇は、気にする様子もなくゆきの隣に座わった。
並んだ料理の中に、ゆきの苦手な椎茸があり、義勇は当たり前のように箸を伸ばすと、何も言わずにそれを自分の器へと移した。
その自然な優しさに、美月がニヤリと笑う。
「あら、水柱様。まるでお父さん…いえ、旦那様みたい。甲斐甲斐しいですね」
美月は、師匠である無一郎の反応を楽しむように言葉を続けた。 「無一郎様、見てください。このお二人、もう夫婦みたいじゃないですか?」
義勇は否定するどころか、その言葉が嬉しいのか少しだけ表情を緩ませた。
しかし、ゆきは気が気ではなかった。
かつて誤解から冷たくされ、自分から婚約を解消した相手。
真実を知った無一郎から「もう一度やり直したい」と言われている今、この状況はあまりに複雑すぎた。
「義勇さん大丈夫です。私食べれます!」
義勇の器から椎茸を取り口に頬張った。
「お、おい!無理しなくとも…」
口の中の椎茸は独特の弾力と香りを主張し、飲み込もうとすればするほど喉が拒絶反応を起こす。
ゆきが涙目で必死に格闘していると、隣で義勇が「やはり無理ではないか」と心配そうに背中に手を添えた。
その時だった。
「見てられないな。そんなに嫌なら、僕が食べてあげるよ」
無一郎の冷ややかな、声が響いたかと思うと、彼の顔が目の前に迫った。
驚きで目を見開いたゆきの唇に、無一郎の柔らかな唇が重なる。 抵抗する間もなかった。無一郎は器用に、かつ強引に、彼女が持て余していた椎茸を自分の口へと移し取ったのだ。
「…ん、ごちそうさま」
何事もなかったかのように唇を離した無一郎は、呆然とするゆきをよそに、ゆっくりと咀嚼して飲み込んだ。
ゆきは、唇に残る感触とあまりに大胆な行動に思考が停止し、顔から火が出るどころか真っ白になって固まっている。
しかし、誰よりも激しい反応を見せたのは義勇だった。
「何をしている、時透」
無一郎を睨みつけた