第74章 継子美月の罠〜時透無一郎 冨岡義勇 【R強】
「さっき美月さんが部屋に来て…また会話聞いちゃって…私はやっぱり義勇さんにとって出来の悪い継子なんだって追い打ちかけられたように感じて…」
淋しく笑うゆきを見て、無一郎の胸がチクリと痛んだ。
今ここで冨岡さんを突き放すようなことを言えば、彼女の心は僕に向くかもしれない。そんな打算が頭をよぎる。
けれど、零れそうな君の涙を見た瞬間、そんな独占欲よりも「笑っていてほしい」という願いが勝ってしまった。
「…勘違いだよ。あの人は君に期待していないんじゃなくて、君を戦わせたくないだけ。執着しすぎて、守ることしか頭にないんだよ。馬鹿だよね…あんなに分かりにくいなんて」
無一郎はわざと呆れたように溜息をつき、ゆきの視線を自分へと向けさせた。
「君を失うのが怖くて、あの人は必死なんだよ。…そんなに悲しそうな顔しないで。これ以上そんな顔をされたら、僕は君を強引に奪い返すよ…」
ゆきは、戸惑った…。いつも気持ちが真っ直ぐで子供みたいに、強引だった無一郎がなんだか大人に感じたからだ。
「暫く会わないうちに、無一郎くんは大人になった…。」
その言葉に、無一郎はどきっとした。すごくうれしかった。今まで、自分は、まだ子供で冨岡さんには敵わないと思っていたからだ…。
「僕も、もうすぐ十五になる。早く大人になりたい…君をしっかり守れるように…」
二人の間に優しい風が吹いた…綺麗な無一郎くんの顔立ちが月に照らされる…真っ直ぐな瞳…
ゆきは、はっと我に返った。「へ、部屋に戻るね。」
立ち上がった瞬間座ったままの無一郎に、抱きしめられ膝に座らされた。
「婚約解消…取り消してくれる?君の過去の痛みも僕は全部承知したから…」
私を膝に抱きながら胸元に顔を埋める無一郎くん…抱き締める力がだんだん強くなる…
「甘い香り…ゆきの香りが落ち着く…」
「へ、部屋に戻らないと…。」
無一郎が、腕の力を緩めてゆきの顔をみた。
「ごめん…困らせて。明日も任務だし、部屋に戻っていいよ」
部屋に向かう私を無一郎くんは、縁側に座りじっと見つめていた…気になり振り返ると優しい笑顔で、手を振ってくれた。
思わず私は、胸がきゅっとなり背を向けた…。
山賊との出来事を知られたら嫌われてしまうと思っていた…なのに…